ニュースリリース - 2008年6月5日

ARM、ルネサス テクノロジ、シノプシスが、業界初のローパワー検証メソドロジを策定

検証エンジニアは、複雑化を極めているローパワー検証を克服するために、
エキスパートが実践した最良の手法を活用可能に

2008年6月3日 カリフォルニア州マウンテンビュー発 - 半導体の設計・製造ツールならびにIPの世界的リーダーであるシノプシス(Synopsys, Inc.、Nasdaq上場コード:SNPS)は本日、ARM社(以下、ARM)、株式会社ルネサス テクノロジ(以下、ルネサス)と協業し、急激に複雑化しているローパワー検証を克服するための業界初のメソドロジを策定したと発表した。三社は、このメソドロジを文書化した“Verification Methodology Manual for Low Power Designs(VMM-LP)”を現在執筆中である。これにより、ローパワー・デザインをくまなく検証するための最良の手法が、設計業界で急速かつ広範囲にわたって普及することになる。VMM-LPは、ARM、ルネサス、シノプシスの三社が検証やIPで培った技術の粋を集めたもので、業界で普及している“Verification Methodology Manual for SystemVerilog”(ARMとシノプシスの共著)のメソドロジに基づいて構築されている。

先進のローパワー設計テクニックの進展に伴って、その検証の複雑度も深刻なものとなっているため、ローパワー設計目標を達成し、シリコンの一発完動を実現するには、系統的で再利用可能な検証環境の構築が急務である。VMM-LPは、ローパワー・デザインに潜むバグの共通原因を明示し、ローパワー検証のルールやガイドラインを示し、再利用可能な検証環境の構築に不可欠となるSystemVerilogクラス・ライブラリを定義し、網羅的なローパワー検証を達成するために必要となるアサーション・ベース検証やカバレッジ解析の推奨テクニックについても言及している。VMM-LPに記述されるSystemVerilogクラス・ライブラリのソースコードは、VMM標準ライブラリやVMM Application同様、業界で評価の高いApache 2.0オープンソース・ライセンス方式で公開される。

ARMのCTO直属ワールドワイド・デザイン・テクノロジ・ディレクター John Goodenough氏は次のように語っている。「2007年は、29億個のARM Powered® プロセッサが市場に出荷されました。ローパワー半導体IPのリーディング・プロバイダとして、当社は、IPの活用と統合を成功裏に達成するためには厳格な検証メソドロジが不可欠であると考えています。VMM-LPは、異なるマーケット・セグメントに属するローパワー技術のリーディング・カンパニーが持っている専門知識とメソドロジを集大成することによって、このニーズにお応えします」

Wipro Technologies社 VLSIデザイン&ベリフィケーション・グループ長 Santhosh Madathil氏は次のように語っている。「当社は、高度なパワー・マネージメントがほどこされたSoCを開発しています。ポータブル・メディア・プレーヤー向けデバイスのように数十ものパワーステートを持つデバイスはその代表ですが、こういったSoCのローパワー検証をくまなく実施するのは大きな開発課題です。VMM-LPにより、チップ検証チームは、ローパワー・デザインの検証を確実に実践するための強力な手法を手にすることになると確信しています」

携帯機器からエンタープライズ・サーバーに至るまで、幅広いエレクトロニクス製品向けSoCの開発には、さまざまなローパワー設計テクニックが用いられている。開発を行う設計者にとって必要なものは、シノプシスのローパワー・ソリューションEclypseの構成ツールであるMVSIM + VCSやMVRCのような多電源対応のダイナミック検証ツールやスタティック検証ツールに加えて、テストベンチの生成/テストケースの作成/カバレッジ目標の達成/アサーションベース検証によるバグ特定などを可能にする厳格な検証メソドロジの存在である。VMM-LPのメソドロジは、こういった要請に応えるために、実績のある優良手法をベースに策定した検証ガイドラインやルール、アサーション・ベース検証やカバレッジ解析のテクニック、クラス・ライブラリを提供している。

サイプレス・セミコンダクタ社 ハイデラバード・デザイン・センターのシニア・ディレクター Narayana L. Pidugu氏は次のように語っている。「当社の開発目標は、当社の全てのローパワー・デザインのシリコン一発完動を達成することです。当社の開発サイクルは超過密な状態となっているため、デザインの検証のスケジュール遵守には想像を絶するプレッシャーがかかっています。VMM-LPで策定されているメソドロジは、ローパワー検証ツールのMVSIMやMVRCを用いて容易に実践できます。当社では、これらのツールを使用することにより、一貫性があって再利用できるやり方で、洗練されたローパワー検証テクニックを活用し、多数に上る製品開発目標を達成してきました」

株式会社ルネサス テクノロジ 設計技術統括部 DFMディジタルEDA技術開発部 部長 杉原仁氏は次のように語っている。「ローパワー設計テクニックが多用されるようになったため、最初の一回で製品開発を成功させるためには検証の重要性がますます高まっています。当社では、シノプシス社のツールを使用して、VMM-LPで策定されているローパワー検証メソドロジを実践してまいりました。VMM-LPには、ローパワー検証を実施するための最良の手法の骨子が系統的に定義されています。当社の基本的な検証リファレンス・ガイドとして役に立ってくれるでしょう」

シノプシス ベリフィケーション・グループ 上級副社長兼ジェネラルマネージャー Manoj Gandhiは次のように述べている。「多電源設計テクニックを用いたローパワー・デザインの検証課題を克服するには、EDAツールだけでは充分とはいえません。ローパワー検証メソドロジが確立されていなければ、開発者は重大な落とし穴に陥る事になります。シノプシスは、ARM様、ルネサス様という業界のローパワー技術のリーディング・カンパニーと協力し、三社の検証に関する専門技術を組み合わせることにより、最先端の再利用可能な検証メソドロジを確立しました」

VMM-LPについて
VMM-LPの主執筆者は、「Low Power Methodology Manual(LPMM) - Springer社刊」の共同執筆者のひとりでありARM社フェローのDavid Flynn、株式会社ルネサス テクノロジ DFMディジタルEDA技術開発部 主管技師の井上善雄、ウェブサイトVerification Guildの主催者でありシノプシス・フェローのJanick Bergeron、旧ArchPro Design Automation社(2007年シノプシスが買収)の創設者であり現在はシノプシスのR&Dグループ・ディレクターを務めているSrikanth Jadcherlaである。

VMM-LPには、ローパワー検証のための環境を迅速に構築し完全な検証を実践するための堅牢で拡張性の高い検証アーキテクチャが定義されている。このメソドロジは、パワー・マネージメントが施されたチップの検証に必要なあらゆる側面に対応している。すなわち、スタティック検証手法を用いるべき部分とダイナミック検証を用いるべき部分についてのサジェスチョン、検証容易性を考慮した設計のテクニック、スピーディな検証を実現するためのアサーションベース検証や検証カバレッジ解析の活用法などである。

供給開始時期
VMM-LPは、2008年秋に発刊を予定している。VMM-LP に記述されるSystemVerilogクラス・ライブラリのソースコードは、業界で評価の高いApache 2.0オープンソース・ライセンス方式で無償公開され、ウェブサイトVMM Central(http://www.vmmcentral.org)よりダウンロードできる。VMM-LPとソースコードの提供の詳細についてはhttp://www.vmmcentral.org/lowpower.htmlより入手可能。VMM-LPの詳細については、VMMユーザー・フォーラム・ランチ(Design Automation Conference開催期間中の6月10日にアナハイムのマリオット・ホテルで開催)で解説される。

シノプシスについて
Synopsys, Inc. は、電子設計自動化(EDA)ソリューションの世界的リーダーであり、半導体の設計ならびに製造に用いられる各種のツール、設計資産(IP)、サービスを全世界のエレクトロニクス関連企業に提供している。システムレベルHW/SW設計検証、IP 、HWインプリメント、HW検証、HW製造、FPGA設計の各ソリューションで構成されるシノプシスの包括的な統合環境により、顧客企業が設計や製造段階で直面している重要な課題、すなわち消費電力や歩留まりの管理、システム設計段階からシリコン製造段階までを網羅する総合検証、開発期間の短縮といった課題を克服することが可能になる。各種テクノロジを駆使したこれらのソリューションを活用することにより、顧客企業は、開発コストや開発リスクを削減しつつ最高の製品を迅速に市場投入することが可能となり、競争力を高めることができる。カリフォルニア州マウンテンビューに本社を置き、事業所は北米、ヨーロッパ、日本、アジア、インドなど70ヶ所。詳細な情報は、http://www.synopsys.co.jpより入手可能。

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<お問い合わせ先> 

日本シノプシス合同会社 フィールド・マーケティング・グループ 藤井 浩充
TEL: 03-5746-1780   FAX: 03-5746-1781