PrimeTime 2010バージョン、タイミング解析容量を5億インスタンス超に拡大
HyperScaleテクノロジによりタイミング解析の実行速度と実行可能容量が5~10倍に向上
2010年6月14日 カリフォルニア州マウンテンビュー発 - 半導体設計・製造ツールならびにIPの世界的リーダーであるシノプシス(Synopsys, Inc.、Nasdaq上場コード:SNPS)は、本日、5億インスタンス以上のデザインのスタティックタイミング解析(STA)を可能にするPrimeTime HyperScaleテクノロジを発表した。これまで設計者は、大規模化の一途をたどるSoCを設計する際、ブロックレベル・タイミング解析をフルチップ解析に統合しタイミング収束を果たすにあたって多くの課題に直面してきた。HyperScaleテクノロジは、この問題を解決する手段を提供するだけでなく、解析実行スピードと実行可能容量を5~10倍に向上する。
今日の大規模SoCのフィジカル・インプリメント工程では、まず個々のブロックをインプリメントし、それらを組み上げてフルチップ・デザインを完成するという手順に従ってタイミング収束とサインオフを実現する手法が主流となっているが、PrimeTime HyperScaleテクノロジは、この設計フローにシームレスに統合できるソリューションである。
HyperScaleテクノロジは、設計の早期段階でフルチップのタイミングを考慮しつつ個別ブロックのタイミングを改善するための優れたメカニズムを提供することにより、設計者のタイミング収束プロセスを改善する。
一方で、ブロック・レベルのタイミング解析結果とタイミング制約の情報をチップ・レベルのタイミング解析で直接再利用することにより、従来のモデリング・テクニックで発生する精度の制限を受けることなく、フルチップSTAの実行時間と実行容量を5~10倍に向上させる。
設計プロセスを通じて、タイミング情報を自動生成するため、設計者は、チップ・レベルとブロック・レベルの両方で、より精度が高くなった最新のタイミング情報を活用してタイミング解析を行うことができるようになる。そのため、タイミング収束実現に向けて最善の判断が可能となり、設計やり直しを削減できる。
Advanced Micro Devices社 デザイン・エンジニアリング担当副社長 Jim Miller氏は次のように語っている。「当社のデザインは5億インスタンスのレベルに近づきつつあり、タイミング解析とサインオフ・プロセスの機能向上の問題に対処するためシノプシス社と協業を重ねてきました。PrimeTime HyperScaleテクノロジは、長期にわたって機能改善を続けていくという意味でも最適なソリューションだと思います。フィジカル・インプリメントやタイミング解析メソドロジとの親和性も高く、タイミング収束プロセスを設計フローの早期に開始できるからです。この新しいテクノロジがもたらしてくれる可能性は非常に素晴らしいものであり、タイミング解析の実行時間と実行容量の改善、そして生産性向上がもたらすメリットに大いに期待しています」
この新しいPrimeTime HyperScaleテクノロジが生成する、より正確なタイミング情報を用いてIC Compilerがタイミング収束を実行するため、Galaxyデザイン・プラットフォーム全体のパフォーマンスも向上する。
さらに、シグナルインテグリティ解析、AOCV(advanced on-chip variation)解析、マルチシナリオ解析、マルチスレッディング・ベースの解析など、PrimeTimeが提供する諸機能にもHyperScaleテクノロジは応用されるため、設計者はSTAの生産性をより向上させることができ、タイミング収束にかかる全体的な期間を短縮できる。
シノプシス インプリメンテーション・グループ 上級副社長兼ジェネラルマネージャー Antun Domicは、次のように述べている。「SoCの複雑度は指数関数的に上昇しています。設計生産性の維持のためには、設計フローの改善が極めて重大な要素となります。HyperScaleテクノロジの追加により、PrimeTime 2010.06バージョンは、次の5~10年に向けてSTA機能を向上させる非常に重要なイノベーションを達成しました。この新バージョンは、現在そして未来に向けた設計生産性向上をご提供するという意味で大きな節目となります」
シノプシスは、本日あわせて、Galaxyサインオフ・ツール群の中から、二つのツールに関して生産性向上を実現する機能改善を発表した。
一つは、RC抽出ソリューション StarRC Customに新しく組み込んだRapid3Dテクノロジで、45nm以降のカスタムSoCデザインのRC抽出とライブラリ・キャラクタライズを最大20倍に高速化する。
もう一つは、ライブラリ・キャラクタライズ・ソリューション Liberty NCXの最新バージョンで、キャラクタライズ実行速度が最大7倍向上、これにより、IC Compilerがフィジカル・インプリメントで、PrimeTimeがタイミング解析で用いるCCS(composite current source)モデルの作成が非常に効率的に行えるようになり、設計者は迅速にタイミング収束を果たすことができるようになり生産性が向上する。
提供開始時期
PrimeTime HyperScaleテクノロジは、現在、PrimeTime SI 2010.06バージョンにて限定顧客向けに提供中である。