自動車の先進運転支援システム(ADAS)に新しいアプリケーションが次々と追加される中、最新世代の自動車ではシステム・アーキテクチャに大きな変化が現れています。これまでのADASアプリケーションは、たとえば前方障害物回避支援システムのECUはフロントに、駐車アシストの超音波センサーとプロセッサはリアに設置するなど、各アプリケーションの電子制御装置(ECU)が車両全体に分散されていました。しかし最近では、複数のADASプリケーションをいくつかの多機能ADAS ECUに統合する傾向が見られます。カメラ、LiDAR、レーダー、超音波などの各種センサーなど、車両全体のリモート・センサーからのデータがこの新しいタイプの統合型ドメイン・コントローラECUへ転送され、高性能ADAS SoC(システム・オン・チップ)で処理されます。統合型のADASドメイン・コントローラSoCは、消費電力と面積を抑えながらこれまで以上に高い性能を達成する必要があります。
統合型ADASドメイン・コントローラはより多くの機能をサポートする必要があり、このことがECU内のADAS SoCアーキテクチャに影響を与えています。これには、設計者にとって必須条件であるSoCレベルのオートモーティブ規格認証も含まれます。しかも統合型ADASドメイン・コントローラSoCだけでなく、その中に含まれるIPについても、最高レベルのASIL(Automotive Safety Integrity Level)に適合すること、温度グレード1および2に適合できるように設計とテストを行うこと、そしてオートモーティブ特有の品質管理プロセスに完全に準拠することが求められます。これに加え、最新の統合型ADASドメイン・コントローラSoCアーキテクチャでは消費電力と性能の要求が更に厳しくなるため、FinFETなど高度なプロセス技術への移行も進んでおり、先進のファウンドリ・プロセスでオートモーティブ規格認証済みIPを使用することがより一層重要になっています。
本稿では、新しい統合型ADASドメイン・コントローラSoCアーキテクチャについてご紹介した後、オートモーティブ規格認証済みIPを使用してSoCレベルの認証から量産までの期間を短縮する方法についてご説明します。