Optical and Photonic Solutions Blog~日本語版~

公開日:2023年7月20日

光学技術の発展により、材料、表面、部品、システムの品質に対する要求はますます高くなり、時にはその内容は全く新しいものとなっています。例えば、その対象は半導体リソグラフィーの微細化、民生用光学機器のナノ構造の機能表面、天文・宇宙用の先端光学システムなどです。光学技術に使用する材料には、その特性を表す正確なデータを含めた分析が必要となります。

光散乱測定は、材料の粗さと表面構造に関する情報を提供することで、こうした要求に応えることができます。これにより、物理的なプロトタイプの製造前に、光学製品の性能に対する材料の影響を予測することができます。さらに、表面形状、表面汚染、バルク指数変動、バルク粒子などの要因を考慮することで、材料が光源とどのように相互作用するかについての情報を得られます。

光散乱測定が光学製品設計をどのように向上させるか、いくつかの例をご紹介します。

1.製品の外観品質を定量化することが可能

外観とは主観的な品質であるため、物体の全体的な外観を定量化することは複雑です。しかし、散乱測定では外観を定量化に通じる特定の側面があります。

  • 色:材料の反射光のスペクトル分布から生成
  • 輝き:材料の幾何形状による反射で生成
  • テクスチャー:材料の反射光の空間分布から生成

外観の定量化には、物理量と、視覚的な測定から得られる観察者の反応情報とで、相関関係を確立する必要があります。この情報を統合する物理量は、双方向反射率分布関数(BRDF)と呼ばれています。

光の散乱により、表面の外観や光学性能が受ける影響

2.ナノスケールの表面粗さを考慮した正確な製品のシミュレーションが可能

散乱測定により、穴、傷、溝、凸凹などの表面欠陥を可視化することが可能です。以下の図に示すように、散乱は表面の状態に依存し、表面欠陥の影響を受けます。

表面品質が光散乱に与える影響

使用する散乱測定装置の解像度によっては、ナノメートル領域の表面欠陥の情報を取得できます。このサイズの欠陥は重大な影響を及ぼす可能性があり、製品開発プロセスの初期段階で検出することが重要であるマイクロエレクトロニクスや宇宙アプリケーションに非常に有効です。スペキュラーベンチを使用して空間部品のナノスケールの表面粗さを検出した例については、Spatial Contaminationのアプリケーションノート(英語版)をお読みください。

3. 実世界の体積散乱データを設計評価に含めることが可能

体積散乱は、材料の体積内で光を散乱させる光学媒体のバルク特性があります。一般的には、材料内部の小さな粒子によって引き起こされます。

散乱測定を使用して、光学設計の材料や構造の体積散乱特性を取得し、その結果を製品シミュレーションに含めることができます。例えば、照明設計解析ソフトウェアLightToolsでは、Gegenbauer 特性を使用して体積散乱をモデル化できます。

散乱測定からの粒子パラメータを使用したLightToolsの体積散乱解析

光学製品の仕様は、単純な粗さを表現した理想的な表面特性を与えて、コンピュータにより導き出されることが多く、表面欠陥は無視されています。この記事で説明したように、BRDFは表面粗さだけでなく、材料の欠陥、バルクの不均一性、汚染によっても影響を含むことがあります。測定された光散乱データは、これらの影響をすべて含み、表現することができます。散乱測定により、光学エンジニアは光学シミュレーション用の正確なデータを得て、製品の品質をより適切に管理できるようになります。

シノプシスでは、明るさと温度が管理したラボで実施する散乱測定サービスを提供しています。この測定を利用することで、測定プロセスで新たな材料欠陥が発生しても、製品シミュレーションを停滞させることは無くなります。シノプシスの測定サービスは迅速にプロセスを実施できます。これは生体組織など、時間の経過とともに状態が変化する特定材料の測定には重要となります。

自社で散乱測定を行う場合は、Synopsys REFLETSynopsys Mini-Diff V2の導入もご検討ください。測定結果はLightToolsなどの光学シミュレーション・ソフトウェアにエクスポートすることができます。

LightToolsでのBSDF解析

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