Optical and Photonic Solutions Blog~日本語版~

公開日:2023年12月18日

人類は好奇心を原動力として、自らをより深く知り、地球上の生物多様性の広大さと豊かさを発見し、身の回りの環境を理解することで、数多くの進歩を生み出しました。

このような探究心により、必然的に私たちは宇宙をより深く理解することを熱望しました。その大きな部分は宇宙を「見る」ことができるようになりたいという欲求でした。

宇宙分野における光学システムは、世界中の宇宙分野に関わる科学者にとって、「宇宙の彼方まで探求し、謎を解き明かす」という目標を達成するために欠かすことのできないものです。

アメリカの「National Space Day」を記念して、光学システムと宇宙探査に関する興味深い事実をまとめてみました。光学設計業界の長年にわたる進化について、ぜひお読みください。

宇宙分野における光学システムの一般的な使用例、設計上の主な課題、宇宙が可能にした数多くのイノベーション、そして宇宙産業の今とシノプシスの軌跡を紹介します。

The International Space Station backdropped by Earth

宇宙探査における半導体の変遷と光学設計

半導体産業と宇宙開発コミュニティは、共に成長してきました。

宇宙探査への関心が高まるにつれて、半導体産業も発展してきており、半導体は宇宙を研究し、より遠くの宇宙へ行くために必要な多くのシステムに電力を供給し、成功する上で重要な役割を担ってきました。

真空管に取って代わり、誘導や制御に必要な計算能力を提供する宇宙船に搭載可能な軽量コンピュータの出現を可能にしました。

その象徴的な例が、1963年のアポロ11号計画とその結果としての月面着陸です。技術者は人類を月へ往復させるのに十分な性能を持つICチップを初めて採用しました。

以降、マーキュリー計画、ボイジャー計画、パイオニア計画などでは、半導体が進化することでイメージングシステムも進化し、それぞれの計画において数多くの成功と実績をもたらし、人類の宇宙についての理解が深まりました。

Apollo 11 Landing | Synopsys

これまでの宇宙探査の大きな飛躍には半導体の存在と進化が不可欠なものでした。

宇宙産業と半導体産業、この2つの産業は密接に関係しており、長年にわたって変化する要件や要求に合わせて進化してきました。

光学システム設計と宇宙探査における多くの進歩は、半導体の進歩に起因しています。光学設計や宇宙探査の黎明期には、光学設計者は数本の光線を手計算で追跡し、その数本の光線追跡から光学設計の指針となる情報を得ていました。

 

これとは対照的に現代のグラフィカルなシノプシスのCODE V、LightToolsなどの光学設計ツールは何百万もの幾何学的な光線を素早く追跡できる高度な半導体ベースのマイクロプロセッサーによって実現されています。これらの光線追跡は、光学設計エンジニアによって導かれる最適化アルゴリズムで使用され、高度な半導体とソフトウェアツールなしでは決して開発できなかった光学システムを設計することができます。

宇宙で用いられる光学システムと現在の設計課題

宇宙探査用途では、多種多様な光学システムが用いられています。宇宙船に搭載される光学システムの一例としてStar Cameraがあります。
Star Cameraは、焦点面アレイ上に星野を結像させる光学システムです。星の画像は標準的な星のカタログと比較され、Star Cameraが向いている方向、ひいては宇宙船の向きを決定します。

Star Cameraは、ほぼすべての現代の宇宙船に組み込まれており、宇宙船の位置と方位を確定するために不可欠なものになっています。

他にも宇宙探査で使用される光学システムの例としては、科学的に重要なシーンの画像を提供するために使用される科学撮像カメラ、大気放出や地質組成を研究するために使用される分光計、さらには距離の確定や物質の組成を遠隔評価するために使用されるLiDARシステムなどがあります。

使用される光学システムは、目的によって異なります。例えばMars Perseverance Roverに搭載されたズームカメラのMastcam-Zは、火星の地形を調査し、火星の過去に水が存在したであろう場所を特定し、地質学的特徴の形成における水の役割について分析するための情報を収集します。また、その場所が生命体の生存に適していた可能性があるかどうかといった情報も収集します。

地球外に存在するかもしれない生命体の探査は、現在、宇宙探査における主要な目的のひとつです。生命体を宿す可能性のある惑星を発見する目的で、地上望遠鏡による探査や宇宙空間でのミッションが進展しています。

しかし、宇宙用光学システムの設計には多くの課題が伴います。環境条件は過酷で、非常に暑い環境もあれば、極端に寒い環境もあり、時には両極端の間で温度が大きく変動します。また、環境によっては腐食性があり、宇宙で使用される光学システムは高い放射線に曝されます。

宇宙用光学システムはますます高度化し、信頼性は極めて高くなければなりません。過酷な環境、高度化の要求、信頼性の課題とともに、技術者は大きさも考慮する必要があります。体積、質量、電力は宇宙船では貴重な資源であり、光学システムには非常に困難な制約が課せられています。

シノプシスの宇宙分野における学際的な取り組みと軌跡

上記に記載したように、数多くの制約や環境条件が課せられた設計および実装要素があるため、宇宙用光学システムの設計と構築にはお互いで協力し合う専門家で構成されたチームが必要です。

宇宙ミッションにおける光学システムは、このようなチーム構成の中で初めて可能となります。スポーツチームのように考えてみてください。すべてのプレーヤーが独自のスキルを持ち寄り、チームメイトを信頼し、ゴールを決めたり、タッチダウンを決めたり、満塁ホームランを打ったりして勝利するために協力し合います。

ミッションクリティカルな宇宙プロジェクトに取り組む際にも、フィールドと同様、政治家やリーダーから技術エキスパートやプログラマーに至るまで、トップダウンで共通の目標を達成するための強力なチーム体制が求められます。

シノプシスには、宇宙開発に携わってきた豊かな歴史があり、適切なチームの一員であることの重要性を熟知しています。シノプシスに買収される以前から、Optical Research Associates社(ORA)は宇宙計画の初期ミッションに設計を提供していました。その後、光学エンジニアはORA/シノプシスのソフトウェアを使用して、ハッブル宇宙望遠鏡の最初のサービスミッションで補正光学系の設計と検証を行い、現在のような鮮明な画像の撮影を可能にしています。最近では、シノプシスの光学エンジニアがさまざまなパートナーと協力して、深宇宙と地球低軌道(LEO)の双方のシステムを手掛けています。

代表的な例として、シノプシスの光学エンジニアはMalin Space Science Systems社、Motiv Space Systems社、アリゾナ州立大学、Jet Propulsion Laboratory(JPL)と協力し、光学設計ソフトウェアのCODE Vを使用して、惑星間および深宇宙探査における初のズームレンズシステムMastcam-Zを設計しました。

また、JWSTプロダクト・インテグリティ・チームの一員としてNASAと緊密に協力し、ビッグバン後に形成された最初の銀河を研究するための観測装置の設計にCODE Vを使用しました。このような組織横断的な取り組みは、ミッションクリティカルな宇宙プロジェクトを成功させ、宇宙に関する知識を広げるために不可欠なのです。

宇宙産業が次に目指すもの

私たちが文字通り、また比喩的に視野を広げ続けるにつれ、宇宙探査の学際的な性質はますます大きくなっていくと思われます。宇宙プロジェクトはますます複雑化し、高度化していくはずです。

そのため、イノベーションの要求に応えるために、組織間やプロバイダー間の協力体制を強化する必要性が高まります。

また、より高性能なソフトウェアツールや、それらのツールを実行するための統合半導体デバイスも必要になるでしょう。

今後は、月や火星、その他の天体をより詳細に探査することを目的とした光学システムを組み込んだ移動体の設計を含め、宇宙探査プロジェクトにエキサイティングな展開が期待できます。

また、地球上から高いレベルの詳細な最新の宇宙観測を可能にする大型地上望遠鏡の建設が進行中です。

これらの開発にはすべて高度な光学システムが関わっています。その多くは地上での制御や監視の強化を必要とし、中には高度な通信衛星を必要とするものもあります。

これらは、今後数年間で普及し進化し続ける分野のほんの一部であり、科学者たちは、われわれはまだ観測可能な宇宙のほんの一部しか探査していないと見積もっており、新しいものを発見するチャンスは非常に多くあります。

今後ますます革新的な光学システムの設計が必要になっていくと断言できます。

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