MOSTの活用事例:サブ波長グレーティング構造

使用ツール

概要

MOST™は、設計デバイスのパラメータ空間を探索し、設計者が最適な設計を行えるようにする強力なスキャンおよび最適化ツールです。この事例では、MOSTの機能を紹介いたします。

ユーザー定義 Measurements

RSoftの各デバイスシミュレーターは、多くの標準Measurementsをサポートしており、ほとんどの問題に対して十分な対応が可能です。しかし、特定の要求に対して標準的なMeasurementsが適していない場合もあります。ユーザー定義Measurementsでは、任意の出力データファイルに基づいて、あらゆる状況に対応するカスタムMeasurementsを作成し、シミュレーションの解析機能を拡張することができます。

ユーザーMeasurementsの作成ルールについては、MOSTマニュアルの3.D.2項を参照してください。ここでは例として、サブ波長回折格子(SWG)を使用して、ユーザーMeasurementsの使用方法を説明します。SWGは、広帯域・高反射率のフィルタリングアプリケーションにおいて、ブラッグ反射スタックに代わる有望な選択肢として最近登場しました。SWG は、大きな位相変化を伴う広いスペクトル領域に対して高い反射率を提供します。この特性は、ビーム操作に使用することができます。

図1に示すように、ここで検討しているSWGグレーティングは石英基板上に周期=0.76umのシリコン溝を並べたものです。TM偏光の平面波が垂直入射で照射されます。このアプリケーションでは、RSoftのRCWAツールであるDiffractMOD™を使用して、このグレーティングの0次光の複素ERET 係数を評価します。

SWG structure | Synopsys

図1:SWGの構成

図2では、RSoft CADで設定したSWG構造を示します。周期境界条件を用いているため、構造全体を表現するためには、1周期分のみ作図しています。複素 ERET の係数を得るために,Output > More ダイアログボックスで "Output Complex ER , ET Coefficients (P-S plane)" オプションが有効になっています.デフォルトでは、データファイルは real/imag フォーマットで出力されます。振幅/位相形式(amp/phase)のデータを得るため、シンボルテーブルで変数「rcwa_output_e_coef_format = 4」を定義しています。  

SWG structure as drawn in the RSoft CAD | Synopsys

図2:RSoft CADで描かれたSWGの構造(左)と

対応する屈折率プロファイル(右)

この SWG 構造で、Harmonics数を2とした際の出力係数データファイルの例を表 1 に示します。このデータファイルには、各回折次数の1つのフィールドコンポーネントの振幅/位相が出力されています。このデータファイルから必要な結果を抽出するには、ユーザーMeasurementsを作成する必要があります。   

Two-harmonic coefficient output data file | Synopsys

表1:SWG構造におけるHarmonics数を2とした際の出力係数データファイル

まず、振幅データのユーザMeasurementを作成します。MOSTダイアログボックスを開き、「Measurements」タブをクリック、「New meas」をクリックします。次に、ユーザーMeasurementsの名称として「Amp」を定義し、Fileを<prefix>_ep_ref_coef.datに設定します。<prefix>キーワードは、各シミュレーションで自動的にMOST接頭辞に置き換わります。データファイルから1つの数値を抽出したいので、User measurement/TypeフィールドでScalarを選択します。

振幅Measurementsでは、最後の行を表す-1(このデータファイルには1行しかない)、右から数えて6番目の数値を抽出するため、Indices に [-1,-6] という値を設定することができます。あるいは、[-1,-6]の代わりに、左上から数えて[0,5]のように設置することもできます(開始値は0)。完了したら、Accept ボタンをクリックして、ユーザーMeasurementsを確定します。

同じ手順で、位相データに対するユーザMeasurementsを定義することができます。位相ユーザMeasurementsでは、Indicesは [-1, -5] となります。

The MOST dialog with the user-measurements Amp and Phase defined | Synopsys

図3: ユーザーMeasurementであるAmpとPhaseが定義されたMOSTのダイアログ

ユーザーMeasurementを作成した後、任意のシンボル(変数)をスキャンすると、標準Measurementと同様にユーザーMeasurementのプロットが自動的に生成されます。図4は、反射光の振幅と位相の変化を調べるために、(a)波長と(b)グレーティングの周期を別々にスキャンした結果です。得られた2つのグラフを図4に示します。この結果は、[1]の図1に示されているグラフとよく一致しています。 

Figure 4: Amp/Phase changes of SWG vs (a) wavelength and (b) period | Synopsys

図4 SWGの振幅/位相変化と(a)波長(b)周期

SWGからの反射は広い周期とスペクトル領域で非常に高いですが、位相は大きな変化を示すことがわかります。この性質を利用して、[1]では非周期性のSWGを用いた自己集光ミラーを形成しています。

参考文献[1] :  D. Fattal, J. Li et al. “Flat dielectric grating reflectors with focusing abilities” Nature Photonics 4, 466 – 470, 2010

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