ムーアの法則やデナードが提唱したスケール則の減速により、アプリケーションに特化した命令セットを持つプロセッサ (ASIP:エイシップ) に対する興味が高まっています。

ASIPはアプリケーション要件に合わせた独自の命令セット・アーキテクチャ(ISA)を実装可能であり、多くの場合はRISC-V ISAなどのベースラインから始まります。設計者はプロセッサ仕様検討から始めて、最適化されたC/C++コンパイラ、サイクル精度並びに命令精度シミュレータ、および論理合成可能なRTL生成を通じてFPGAなどへのハードウェア実装をASIP Designerにより即座に実現できます。最適化フェーズにおいては独自のCompiler-in-the-loopおよびSynthesis-in-the-loop手法を使用して、ISAとマイクロアーキテクチャをアプリケーション要件に合わせて迅速にプロファイリングすることができます。ASIPは従来のRTL記述されたハードウェア・アクセラレータとの置き換えができるため、ソフトウェア・プログラマビリティをアクセラレーション領域に展開することでSoC設計開発プロセスとSoC設計開発後の両面において設計柔軟性が大幅に向上します。

 

本セミナーでは長崎大学 副学長の柴田教授を迎え “次世代省エネルギーコンピューティング研究基盤としてのASIP Designer“と題してご講演をいただくと共にポスト量子暗号化ASIPの設計開発など 詳細な技術プレゼンテーションを通じて、ASIP Designerを用いたRISC-Vプロセッサ開発のポイント、ASIP DesignerとRTL-Architectとの相互運用性などわかりやすく事例を含めてご紹介します。

 

次世代省エネルギーコンピューティング研究基盤としてのASIP Designer

長崎大学 副学長(情報担当)

ICT基盤センター長 情報データ科学部 
教授 柴田 裕一郎 様

世界の情報通信機器の消費電力は2030年には、2016年の30倍以上になる試算が文部科学省で行われ、情報通信機器の普及加速には省エネと小型軽量化を両立するパワーエレクトロニクス技術が必要とされています。特に、パワーエレクトロニクス回路システムの超小型化や性能向上のためには、革新的なデジタル制御システムと融合した集積化が重要であり、その際、集積回路(LSI)研究などのパワーエレクトロニクス分野以外の研究領域の知見や、パワーエレクトロニクス制御に特化したプロセッサによる柔軟性の高い制御技術が必要となります。長崎大学では効率的なパワーデバイスの実現に向けて、プロセッサモジュールにおける各演算ブロックのエネルギー分布の解析、パフォーマンスと消費電力の間のトレードオフ分析、ならびにエネルギーを意識したソフトウェアコーディングスタイルの確立を目指し、RISC-Vプロセッサをベースとした動的負荷予測モデルの構築を目指しています。

今回はシノプシス社のASIP Designerに付属しているプロセッサモデルを足掛かりにnML 言語の理解から実際のモデリングまでの道のり、そして習得に至るまでのポイントや注意事項など経験則をもとに解説します。

プロセッサ市場動向とドメイン領域プロセッサを実現するASIP Designerツールの紹介

Synopsys, Inc. 
Product Manager, ASIP Tools
Patrick Verbist

ドメイン領域プロセッサ(アプリケーション特化型プロセッサ:ASIPとも呼ばれる)は、最適化されたハードウェアにソフトウェアのプログラマビリティによる柔軟性を持ち合わせています。 このプレゼンテーションでは、昨今のプロセッサ市場に見られるトレンドに触れながら、ASIPの概念とASIP Designer ツールスイートの主なポイントを紹介します。

ASIP Designerによるアプリケーションに特化した独自 RISC-Vの設計開発

Synopsys, Inc. 
Sr. Director R&D, ASIP Tools
Gert Goossens

RISC-Vは当初からISA拡張が重要な概念でした。 ただし、これらの概念をうまく活用するには、体系的な設計方法論とツールが必要です。特定用途向け命令セット プロセッサ(ASIP)設計ツールは、これらのニーズに対応しRISC-V のカスタマイズを設計者が効率的に実現できます。 ASIP Designer には、ソフトウェア開発環境(SDK)と RTLの自動生成が可能なnML で記述された無償のRISC-Vサンプルモデルが付属されています。

このセッションではASIP Designerによる 3 つの設計事例を説明します。 1 つ目は、RISC-V の予約されたオペコード空間でエンコードされた拡張命令テンプレートを備えた RISC-V。 2 つ目は、MobileNet v3 用の AI アクセラレータ機能を持つRISC-V、 3 つ目は、ベクトル拡張と命令レベルでの並列処理(ILP)を備えた通常のRISC-Vでは達成できない大幅な性能向上を実現するRISC-Vについて紹介します。

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