沖電気、シノプシス社のHSPICE高耐圧MOSモデルを標準採用 - ～液晶TV用ドライバLSIの開発期間を1/2削減～

沖電気工業株式会社（社長：篠塚勝正、本社：東京都港区、以下沖電気）と半導体設計ツール大手Synopsys, Inc.（社長：Aart de Geus、本社：カリフォルニア州マウンテンビュー、以下シノプシス社）は、このたび、沖電気の液晶TV用ドライバLSIの設計工程に、シノプシス社の高精度回路シミュレータHSPICE（注１）の新しい高耐圧MOS(HVMOS)モデル（注２）を標準システムとして導入し、液晶TV用ドライバLSIの開発期間を1/2に短縮することを実現しました。

従来、LSI設計に使われるシミュレータとHVMOSモデルを用いたシミュレーション結果は、実際のLSIの実測データに対して大きなバラツキがあったため、実測データをフィードバックして再設計を繰り返すことがしばしば必要で、再設計にかかる費用と時間が大きな課題となっていました。

沖電気は、シノプシス社のHSPICEの新しいHVMOSモデルと、モデル・パラメータ抽出ツールAurora（注３）を組み合わせて採用することにより、従来数日かかっていたモデル・パラメータの抽出に要する期間を2時間以内に大幅に短縮しました。また従来、実測データとの誤差が最大20～30％であったシミュレーションの精度を、数％以内に向上させました。

シノプシス社が開発した新しいHVMOSモデルは、今日の多様な高耐圧トランジスタ技術に必須の物理効果をすべて組み込んでいます。また広範囲の動作電圧、温度およびプロセス・テクノロジを用いた複数の回路で製造実証されており、デバイスモデルとシリコン実測データとの相関性を高めています。更に、独自のHVMOS技術により、モデル・パラメータの抽出と実証に要する期間を数週間から数時間に短縮しています。これにより、超高解像度の鮮明な画像を実現する大画面液晶TVをはじめ、通信、自動車、コンピュータ、コンシューマ製品等の先端LSI向けに高密度/高耐圧ドライバの設計が可能となります。

沖電気は、今回の新しいHVMOSモデルを標準採用し、シノプシス社の業界最高レベルの回路シミュレーション技術およびモデリング技術を活用することにより、設計プロジェクトの開発期間(Time to Result=TTR)の短縮だけでなく、結果品質(Quality of Result=QOR)の向上にも成功しています。

シノプシス社は、HSPICEをはじめ、最先端IC設計の回路シミュレーションで要求されるテクノロジとツール群をお届けして参りました。今後も技術革新を重ねて格段高精度な性能を実現し、ユーザにおけるLSI設計期間の大幅短縮に貢献していきます。

【用語解説】
注１：HSPICE

高精度な解析機能を持つ業界標準の回路シミュレータ。高精度なICデバイス･モデルと最先端のシミュレーション/解析アルゴリズムにより、高精度で卓越した回路シミュレーションを実現します。

注２：HVMOS

通常のMOSFET(金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ)に比べ、高い耐圧を実現したMOSFET構造。主にLCDドライバ向けに使われています。

注３：Aurora

HSPICEのSPICEモデルをデフォルトの内蔵モデルとして利用して、回路レベルのデバイスモデル・パラメータを抽出するシステムです。

【HVMOSモデルの出荷時期について】

HVMOSモデルは、現在ベータ版が評価用に提供されており、2005年3月よりHSPICEの一部として一般リリースが開始される。トランジスタレベル・モデルパラメータ抽出ツールAuroraのHVMOS機能も現在評価が可能である。HSPICEは、業界標準のVerilog HDLシミュレータVCSと高速フルチップ回路シミュレータNanoSimとともに、シノプシスの高性能ミックスド・シグナル検証ソリューションDiscovery AMSを構成する業界標準の回路シミュレータである。製造段階ですでに実証されているこれらの最高レベルのシミュレータ群は、高い精度、パフォーマンスおよびキャパシティと同時にVerilog、SPICEおよびVerilog-Aの記述が混在するデザインのシミュレーションを可能にする柔軟性を提供している。

【シノプシス社について】
Synopsys, Inc. は、IC設計向け電子設計自動化ソフトウェア（EDAツール）の世界的リーダである。複雑なシステムオンチップ開発を実現する、最先端技術を用いたIC設計プラットフォームと検証プラットフォーム、および製造ソフトウェアを世界中のエレクトロニクス市場向けに提供している。また、顧客の設計プロセスを簡素化し、その製品開発期間を短縮するために、設計資産（IP）やデザイン・コンサルティング・サービスを提供している。カリフォルニア州マウンテンビューに本社を置き、事業所は北米、ヨーロッパ、日本、アジアなど60ヶ所。詳細な情報は、http://www.synopsys.co.jp　より入手可能。