Optical and Photonic Solutions Blog~日本語版~

公開日:2025年2月27日

二輪車(以下、バイク)用ヘッドランプの設計では、最適なヘッドランプ性能を確保することが、ライダーの安全と視認性のために極めて重要です。自動車用照明設計ソフトウェア LucidShape製品の設計機能を利用することでバイク用ヘッドランプを効率的に光学設計をすることができます。 注目ポイントは、マクロフォーカル設計機能に基づいてリフレクターシステムを設計することで、ハイビームとロービームの両方の機能に対応することです。


バイク用ECE規格

バイクのヘッドランプ設計は、欧州経済委員会(ECE)規格、特に旧式の国連規格No.113に基づく国連規格No.149に準拠しなければなりません。この規格は、左右対称のすれ違いビーム(ロービーム)または走行ビーム(ハイビーム)を発する自動車用ヘッドランプの認証に関する統一規定を定めています。 この規格では、A(S)、B(S)、C(S)、D(S)、E(S)などの様々なクラスがあり、バイクのモータリゼーションに基づき、12Vと13.2Vのバージョンでカンデラ(cd)とルクス(lx/25)の仕様が定められています。 LucidShapeは、LID Measure Test Tableツールにより、迅速で簡単な測定手法を提供し、規格適合のチェックを容易にします。

In LucidShape, the LID Measure Test Table tool provides a quick and easy measurement procedure.

LucidShapeのLID Measure Test Tableツールは、迅速で簡単な測定手法を提供します。

CADデータの概要

このプロジェクトで使用したCADデータは、ツーリング用バイクのモデルから作成したものです。ヘッドランプユニットは、ロービーム用のアッパーリフレクター、ハイビーム用のロアリフレクター、デイタイムランニングライトを保持するフレームで構成され、すべてアウターレンズで覆われています。 まず、データを*.stlフォーマットに変換し、CATIA統合型の自動車用照明設計ソフトウェアLucidShape CAA V5 Based(以下、LucidShape CAA)にインポートします。

Model of a travel-motorcycle from an Austrian manufacturer for additive manufacturing and game design, obtained from 3dmodels.org | Synopsys

3dmodels.orgから入手した、

積層造形とゲームデザインのためのオーストリアのメーカーによるツーリング用バイクのモデル

設計プロセス

材料の割り当て

材料は、反射率と屈折率に基づいて割り当てられます。

  • アクティブ・リフレクター(紫):0.8 反射率、理想的なスペキュラー
  • スパッタリングプラスチック(グレー):0.7 反射率、ガウシアンリフレクター
  • レンズ:Röhm  8N クリアー(PMMA)
  • バルブギャップ:0.15反射ランバーシアン
  • 電球ガラス: n=1.5、理想的な屈折
  • 電球線:0.5反射ランバーシアン
  • バルブソケット:アブソーバー
  • H11光源:1350ルーメンのシリンダー(13.2V時) ランバーシアン発光
  • DRL光源:1x1 mm² 3000K、20 lmのブラックボディスペクトルのランバーシアンエミッター
Sample material | Synopsys

シミュレーションの基本

H11電球のキャリブレーションは、電球の光学特性がどのようなものであっても、同じ出力光束が得られることを保証します。リフレクターやハウジングのないH11電球は、公称1350ルーメンでシミュレーションされ、球体センサーが出力全光束を計測します。効率は、計測された出力光束と1350ルーメンの割合から計算されます。

The calibration of the H11 bulb | Synopsys

ロービームの設計

ロービームでは、R149クラスDS 13.2V(cd)をターゲットとします。7×2ファセットのマクロフォーカルツールを使用し、MFロービームヘッドランプの例から設計を始めます。水平方向のビームの広がりを抑えることで、必要な照度仕様を達成するための調整を行いました。また、意匠面(Aサーフェス)と光線偏差補正設計機能を使用して、ヘッドランプアウターレンズを設計しました。 このステップは、アウターレンズが配光分布に悪影響を与え、グレアやディストーション効果を引き起こし、ビームパターンの強度を低下させることを避けるために重要です。

ハイビームの設計

ハイビーム設計は、R149/R113クラスC(S) プライマリーヘッドランプ13.2V(cd)をターゲットとします。 0,0のホットスポットを起点とし、ホットスポットを25000cd以上に保ちながら、ビームの広がりを大きくするように調整しています。

デイタイム・ランニング・ランプの設計

デイタイム・ランニング・ランプ(DRL)の設計は、PS回転リフレクターをベースにしています。位置決めとトリム作業はCATIA V5の機能で処理されました。得られたDRLはモンテカルロ光線追跡法を用いてシミュレーションされ、得られた測光結果はECE R148のDRLテストテーブルと照らし合わせ合否判定を確認しました。

The design of the daytime running lamp (DRL) and test table | Synopsys

解析

今回の設計でのECE規格適合確認は、LucidShape CAAのテストテーブル機能を使用します。

結果、以下の規格へ適合することが確認できました。

  • ECE R149 Class DS 13.2V for Low beam
  • ECE R149 Class CS primary 13.2V for High beam (with optimization potential)
  • ECE R148 for daytime running light

また、CATIA V5の解析機能を利用して、リフレクター形状の金型離型性を評価することができます。

Reflector shape | Synopsys

ドライバーズビューとバーズアイビューでは、シングルソースオプションが選択されます。これは二輪車のためランプが1つのためです。

次に適切なランプ取付け位置に調整します。 ロービームとハイビームのビームパターンが均一になるように調整されます。

Driver view and Bird’s eye view | Synopsys

LucidShapeでのハイビーム解析

ビジュアライズ (レンダリング)

ヘッドランプの設計が外観要件を満たしているかどうかを確認するために、LucidShape CAAのVisualizeモジュールを使用して、非常にリアルな外観の画像化を行いました。画像化にあたっては、全ての照明機能を点灯しています。

Headlamp visualization in the LucidShape CAA's Visualize module | Synopsys

まとめ

LucidShapeは、バイクのヘッドランプ設計のための総合的なソリューションを提供します。強力な設計機能により、エンジニアは高性能で効率的なランプを開発することができます。さらに、充実した解析機能により、設計途中や最終的な設計検証の際に重要となる、規格への準拠を効率的に確認することができます。

LucidShape CAAは、CATIA V5環境でLucidShapeの強力な設計機能をフル活用することで、設計プロセスを大幅にスピードアップすることができます。設計機能はCATIAの機能と組み合わせることができ、完全にパラメータ化され、更新可能なモデルを構築できるため、非常に効率的な設計の試行が可能です。繰り返し行われるCADデータなどのインポート/エクスポート作業は必要なくなり、エンジニアは設計や性能に関する重要な部分に集中することができます。

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