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2019 vol.112

人工知能(AI)SoCのDNA

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人工知能(AI)はこの10年でいくつかの大きな進歩を見せ、現代において最も人々を魅了するテクノロジの1つとなっています。2012年、画像認識コンテストのImageNetでトロント大学のジェフリー・ヒントン教授は汎化能力を高めたバック・プロパゲーション(誤差逆伝播法)によるニューラル・ネットワーク・アルゴリズムを披露し、コンピュータ・ビジョンの分野に革命を起こしました。この数学理論自体はそれ以前に開発されていましたが、このタイミングでこの偉業が実現したのは、Nvidia GTX 580 GPUなどマイクロプロセッサが進化したことに理由があります。メモリー帯域幅が比較的広く、非常に高い行列乗算性能を備えたプロセッサを使用したため、このニューラル・ネットワーク・モデルは学習にかかる期間が約1週間にまで短縮されました。このように数学と高い処理性能が組み合わさることで新世代のテクノロジが次々と開発され、まったく新しいAIの可能性が開けています。本稿では、新時代のAIデザインおよびそこで求められるプロセッシング、メモリー、コネクティビティのさまざまな要件についてご説明します。

AIの分類

図1に示すように、人工知能(AI)の一部に機械学習があり、機械学習の一部にニューラル・ネットワークがあり、ニューラル・ネットワークの学習をディープ・ラーニングと呼びます。これらの区別はきちんと押さえておく必要があります。というのも、現在システム・オン・チップ(SoC)のアーキテクチャ設計に影響を与えているのはAIや機械学習ではなく、その一部であるディープ・ラーニングであるためです。

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図1:AIはディープ・ラーニング・アルゴリズムを使用して人間の行動を模倣

ディープ・ラーニングはSoCの構成に影響を与えているだけでなく、半導体市場で新世代の投資を次々と生み出しています。畳込みニューラル・ネットワーク(CNN)などのディープ・ラーニング・アルゴリズム・モデルは、研究開発コミュニティと商業目的の両方で広く利用されています。CNNは主にマシン・ビジョンに利用されています。これに対し、再帰型ニューラル・ネットワーク(RNN)などのモデルは時間を認識できるため、自然言語の解釈に利用されています。

AIの応用

ニューラル・ネットワークのディープ・ラーニングは多くのアプリケーションで使用され、ユーザーにとって強力なツールとなっています。例えば、高度なセキュリティ脅威解析を実行してセキュリティ侵害を予測・予防したり、潜在的顧客がとる行動パターンを予測して広告主が販売プロセスを特定し、合理化できるようにしたりするのにもAIは活用されています。ここに挙げた2つの例はいずれも、GPUとAIアクセラレータという最新の半導体テクノロジを導入したサーバ・ファームで実行されるデータセンター・アプリケーションです。

しかしAIが利用されているのはデータセンターだけではありません。物体や顔を検出するビジョン・システム、ヒューマン・マシン・インターフェイスを改善する自然言語解釈、コンテキスト・アウェアネスなど、さまざまなセンサー入力を組み合わせて周囲の状況を理解する新しい機能が数多く登場しています。自動車、モバイル、デジタル・ホーム、データセンター、IoTなどあらゆる市場で、こうしたディープ・ラーニング機能がSoCに追加されるようになっています(図2)。

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図2:幅広い市場でAI機能を取り込んだアプリケーションが登場

現在のスマートフォンは、上記のAI機能の多くにニューラル・ネットワークを利用し、顔認識アプリ、物体識別アプリ、自然言語解釈アプリなどを実行しています。また、5Gでは多くの媒体が追加され、多くの異なるスペクトラムを使用し、さまざまな優先度のデータが転送され、無線信号の密度が高くなるため、ネットワークの自己組織化にニューラル・ネットワークが内部で使用されます。

人間の脳

ディープ・ラーニングが実現可能になったのは、数学と半導体ハードウェアの両方が進歩したごく最近のことです。現在は、次世代の数学モデルと半導体アーキテクチャを使って人間の脳をより忠実に再現しようという試みがいくつか進められています。これらは一般にニューロモルフィック・コンピューティングと呼ばれます。人間の脳は驚くほど効率がよく、テクノロジはまだその足元にも及びません。人間の脳をコンピュータにたとえると、1ペタバイト以上のメモリーと約540兆個のトランジスタを12 W未満の消費電力で動作させていることになります。これをテクノロジで再現するには、まだ長い年月が必要です。しかし、2012年に画像認識コンテストのImageNetで初のバック・プロパゲーション(誤差逆伝播法)CNNアルゴリズムが登場した後、2015年にはResNet 152と呼ばれるより高度なAIモデルが人間をしのぐ誤り率を達成しています。この市場は急速に進歩を続けており、新しいアルゴリズムが頻繁に発表されると同時に、半導体も市場での競争に勝つために必要な機能を次々と取り込んでいます。

AIデザインの課題

SoCにディープ・ラーニングの機能を取り込むには、SoCアーキテクチャにいくつかの重大な変更を加える必要があります。具体的に必要となるのは、特化したプロセッシング、革新的なメモリー・アーキテクチャ、リアルタイムのデータ接続性で、これらは特定用途向けソリューションと汎用AI SoCデザインの両方に影響を与えます。

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