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today&tomorrow

What's New in DesignWare IP?

2018 vol.111

生活に溶け込む人工知能

急速に進歩するAI

数年前に比べ、最近は人工知能に関する報道が急増しています。これは、消費者に身近なマスマーケット・アプリケーションでAIの導入が広がっているためです。AIはこれまでの学術研究やメインフレーム・コンピュータの域を出て、私たちが日常的に使用している組込みアプリケーションにも採用されるようになっています。こうしたシフトの背景には、プロセス技術、マイクロプロセッサ、AIアルゴリズムの進歩があります。AIアプリケーションを実行するには、強力な処理性能と大量のメモリーが必要です。このことは、潤沢なリソースを利用できるメインフレーム・コンピュータならそれほど問題になりません。しかし携帯型/組込みアプリケーションの場合、性能とメモリー容量を引き上げると消費電力も増えてしまうため、AIの導入は容易ではありません。幸い、半導体プロセスの微細化により回路面積と消費電力が減少を続けているため、最近ではAIに必要な大容量メモリーと先進のプロセッサをワンチップに統合できるようになっています。

こうしたプロセス技術とマイクロプロセッサの進歩により、数年前には考えられなかったほどの性能を非常に小型のプロセッサで実現できるようになり、組込みアプリケーションへのAIの実装が可能となっています。たとえばシノプシスDesignWare® ARC® HS44はスーパースカラー・パイプラインを備え、0.06 mm2の面積と50 µW/MHz未満の消費電力で1コアあたり最大5500 DMIPS(16FFプロセス、ワースト・ケース)の性能を発揮します。デュアルコア、クワッドコア構成を使用すれば、更に高い性能を容易に達成できます。ARC HSファミリー・コアは、AIアプリケーションのタスクの一部を構成するアプリケーション・ホスト、通信、制御、前/後処理に使用できます。図2に示すAI開発プラットフォームは、幅広い種類のAIアプリケーションに利用できます。

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図2:ARC HSプロセッサを使用したAIプラットフォーム(提供:台湾 国家実験研究院)
http://www.cic.org.tw/aisoc/aisoc.jsp

ARC HSのようなプロセッサをAIタスクに使用することもできますが、個々のAIタスクに特化した専用プロセッサを使用すれば、組込みAIアプリケーションの性能を最大限に引き上げることができます。たとえば、マシン・ビジョン・アプリケーションにはこれまでGPUが使われてきましたが、最近ではシノプシスDesignWare EV6xエンベデッド・ビジョン・プロセッサのような専用のビジョン・プロセッサが使われるようになっています。EV6xファミリ(EV61、EV62、EV64)はプログラマブルCNNエンジンを設定することで、最大4K HDビデオ・ストリームに対して物体検出と分類を実行できます。EV6xファミリはヘテロジニアス・プロセッシング・ユニットを内蔵しており(図3)、最大3520個のMACユニットでコンフィギュレーションすると最大4.5 TMAC/sを達成でき、AlexNet、GoogLeNet、ResNet、SqueezeNet、TinyYoloを含むCNNアルゴリズムを幅広くサポートできます。この圧倒的な処理性能をSoCに統合することにより、図1に示したようなシーン分割/分類アプリケーションでHDビデオ・ストリームに対する先進のビジョン処理が可能となっています。

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図3:最大4つのビジョンCPUとオプションのCNNエンジンを内蔵したDesignWare EV6xエンベデッド・ビジョン・プロセッサ

最近はこうした専用プロセッサが高性能化しているだけでなく、これらプロセッサで実行されるアルゴリズムの精度も向上しています。図4に示すように、最近のCNNグラフでは分類の精度と能力が飛躍的に向上しています。ResNetの誤答率3.6%は、人間(専門家を含む)を上回るイメージ認識能力です。これらのアルゴリズムはDesignWare EV6xプロセッサなどのビジョン・プロセッサでも実行が可能で、SoCにインプリメントして監視カメラや携帯機器などの組込みアプリケーションで利用できます。

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図4:CNNを使用した物体分類アルゴリズムの進歩

まとめ

AIは既に驚異的な進歩を遂げていますが、今後5~10年でどこまで進化するのか興味は尽きません。自動運転車はもちろん実用化され、パーソナル・アシスタントはもっとインテリジェントになるでしょう。シームレスな翻訳/通訳機能も登場し、以前はそれなしで旅行できていたことを不思議に思う時代が来るはずです。マイクロプロセッサ、AIアルゴリズム、プロセス技術が今後更に進歩していけば、まだ誰も考えついていないような新しいAIアプリケーションが実現するでしょう。シノプシスが最先端をリードしているAIは、今その可能性の全貌が明らかになろうとしています。生産性の向上から旅行のあり方まで、AIは今後私たちの生活を根底から変革していくでしょう。

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