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2017 Dec. vol.108

UHDディスプレイに対応した視覚的に品質劣化のない圧縮技術VESA DSC

シノプシス シニアASICデジタル・デザイン・エンジニア Pedro Ricardo Miguel

ハイエンドのスマートフォン、車載インフォテインメント・システム、拡張現実(AR)/仮想現実(VR)機器のディスプレイは、クアッドHDや4Kなどの高解像度、高フレーム・レート、そしてRGBフォーマットのサポートなど長足の進歩を遂げており、これに伴って必要なデータ帯域幅が拡大しています。設計者にとっては、消費電力の増大を抑え、画質を損なうことなくこのデータ帯域幅の要件を満たすことが新たな課題となっています。そこで求められるのが、MIPI® Display Serial Interface(DSI®)のようなディスプレイ・インターフェイス上で視覚的に品質劣化のない圧縮を可能にするプロトコルです。

VESA(Video Electronics Standards Association)DSC(Display Stream Compression)規格は、視覚的な品質劣化なしに低レイテンシでUHD(Ultra High Definition)ディスプレイをサポートします。このDSC規格は、VESAとMIPI Allianceの協業によりMIPI DSI規格に統合されています。本稿では、見た目の品質劣化なしに最大4:1のデータ圧縮比を実現するVESA DSC規格についてご説明します。このVESA DSCは、統合型のMIPI DSI IPソリューションを用いてインプリメントできます。

課題:ディスプレイの高解像度化に伴い、必要な帯域幅が拡大

MIPI DSIは低消費電力、低レイテンシ、低コストのIC間接続ソリューションで、主にマルチメディア・プロセッサをディスプレイやその他のマルチメディアSoC(システム・オン・チップ)に接続する目的で使用されます。MIPI DSIはモバイル(スマートフォン、タブレット)、車載(ADAS、インフォテインメント)、マルチメディア(AR/VR)など幅広いアプリケーションをターゲットにしています。しかしこれらの機器でも4K解像度のディスプレイが求められるようになった現在、MIPI DSI仕様の帯域幅が限界を迎えようとしています。

MIPI DSIは1レーンあたり2.5 GbpsのMIPI D-PHY物理リンクで動作し、1リンク(4レーン)あたり最大10 Gbpsのデータ・レートを達成します。しかし以下に示すように、4Kや3D 1080pなどハイエンドのビデオ/イメージ解像度をサポートするにはこの帯域幅では不十分です。

  • 4K:24ビットRGB @ 60 fps(フレーム/秒)の場合13 Gbps(アクティブ・エリアで12 Gbps)が必要
  • 3D 1080p:24ビットRGB @ 60 fpsの場合12 Gbps(アクティブ・エリアで11 Gbps)が必要

これよりも色深度が大きいと、必要な帯域幅は更に拡大します。一般に、この問題を解決するには機器のアーキテクチャや回路設計を変更してDSIデータ・レーン数を増やす必要がありますが、そうすると設計の期間、コスト、リスクが増大します。MIPI DSI仕様に統合されたVESA DSCを利用すると、ASICアーキテクチャやシステム回路の大幅な変更なしに帯域幅不足の問題を解消できます。

課題を解決するVESA DSC

MIPIとVESAの協業によってDSCがDSIに統合されたことで、「ソースおよびディスプレイ機器設計者は視覚的に品質劣化のない標準化された方法でより多くのピクセル・データをディスプレイ・リンクに送信でき、ディスプレイ・ドライバICの内蔵フレーム・バッファのメモリー・サイズも節約できます」(ホワイトペーパー『VESA Display Stream Compression』2014年3月3日)。VESA DSCは、図1のブロック図に示すような形でMIPI DSIに統合されます。

画像(仮)

図1:ホスト側、デバイス側でのDSCとDSIの協調動作の例

VESA DSCのアルゴリズムは固定ビット・レート・モードでデータを圧縮します。このため、DSIは特別な処理やパディングなしに確定的なサイズのストリームを伝送できます。ストリームのサイズが確定的であるため、イメージの色やその他の細部が変化してもすべてのパケット・サイズが既知であるのが特長です。

表1は、DSCを使用した場合としない場合の圧縮比をいくつか示したものです。たとえば24ビットRGBでは通常1ピクセルにつき24ビット(24 bpp)が送信されますが、DSCを使用して帯域幅を12 bppに圧縮した場合、送信データ・レートは1/2で済みます(圧縮比2:1)。同じ24ビットRGBイメージをDSCで8 bppに圧縮した場合、送信データ量は元のデータの1/3になります(圧縮比3:1)。DSCエンコードは視覚的にロスレスであるため、圧縮してもイメージの品質は損なわれません。

画像(仮)

表1:DSCを使用した場合としない場合のサンプル圧縮比

VESA DSCを使用すると、4Kおよび3D 1080p解像度のビデオ/イメージを既存のディスプレイ・リンクでサポートできます。

  • 4Kを12 bpp @ 60 fpsに圧縮した場合、必要な帯域幅は6.5 Gbps(3または4レーンでサポート可能)
  • 4Kを8 bpp @ 60 fpsに圧縮した場合、必要な帯域幅は4.4 Gbps(2、3、4レーンでサポート可能)
  • 3D 1080pを12 bpp @ 60 fpsに圧縮した場合、必要な帯域幅は6 Gbps(3または4レーンでサポート可能)
  • 3D 1080pを8 bpp @ 60 fpsに圧縮した場合、必要な帯域幅は4 Gbps(2、3、4レーンでサポート可能)

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