バックナンバーはこちら

today&tomorrow

Technology Update

  • T&T HOME
  • Technology Update
  • シノプシスとオートモーティブ:「Silicon to Software」でよりスマート、より安全、そしてよりセキュアな運転を実現へ

2017 Dec. vol.108

シノプシスとオートモーティブ:「Silicon to Software」でよりスマート、より安全、そしてよりセキュアな運転を実現へ

シノプシス コミュニケーションズ・ストラテジ担当ディレクター Mike Santarini

4年サイクルからムーアの法則へ

自動車業界は、これまで平均して4年サイクルでエレクトロニクス・システムを開発してきました。つまり今運転している自動車は少なくとも3~4年前(通常はもっと前)のエレクトロニクス部品やテクノロジを使って設計されたものです。しかもこれらのエレクトロニクス・システムの設計に関する規格や、自動化した(または多少なりとも組織的な)設計プロセスもありませんでした。しかし新車販売の目玉としてスマート機能の開発を競う自動車メーカー側の事情と、最新のデジタル家電に匹敵する車載エレクトロニクス・機器を求める消費者側のニーズを背景に、車載エレクトロニクス機器の設計サイクルはムーアの法則の2年サイクルへと短縮されつつあります。

それと同時に、あらゆる自動車でソフトウェアが指数関数的に複雑化しています。ほんの10年ほど前まで、一般的な自動車設計プロセスはOEMが次世代自動車の要件を定義する作業から始まっていました。ここで主に検討されるのは自動車の外観や機械的な側面で、エレクトロニクス・システムの機能は二の次でした。仕様が完成すると、OEMは車載エレクトロニクス・システムをECU(Electronic Control Unit)の単位に分割し、Tier-1サプライヤ(Bosch社、Delphi社、Continental社など)に対して各ECUへの入札を求めます。通常は、最も多くの機能に対して最も安い金額を提示したTier-1サプライヤが落札します。このTier-1サプライヤは次にTier-2サプライヤ(半導体メーカー、部品ベンダ、PCBメーカーなど)に対してECUの各ソケットへの入札を求めます。車載半導体市場が独特なのは、サプライチェーンのあらゆる階層で法的責任を問われる可能性が懸念されるという点です。また、車載エレクトロニクス・システムはほとんど軍事グレードに匹敵する厳格な品質と信頼性が要求されるにもかかわらず、ASP(平均販売価格)はコンシューマ・エレクトロニクス向けICと同等まで低く抑える必要があります。

ECUの部品構成が決まったら、Tier-1サプライヤは仕様を満たすようにECUの設計とテストを開始します。新車発売を約1年後に控えた時点でTier-1サプライヤ各社がOEMの元にECUを持ち寄り、大部屋ですべての車載システムをワイヤ・ハーネスに接続し、実際に動作させて正しく機能するかをテストします。テストとリビジョンを繰り返した後、OEMはハーネスとECUをシャシーに取り付け、路上テストを実施し、天候の変化や振動によって発生する不具合を事前に特定します。

現在、自動車メーカーは最先端のエレクトロニクス・システム・メーカーと呼ぶことができます。自動車(特にエレクトロニクス・システムおよび完全なソフトウェア・スタック)の設計およびテスト・プロセスは非常に複雑になっており、熱や振動による摩耗以外にも多くの危険が存在します。複数の車載有線バス(CAN、FlexRay、LIN、100 Mbps/1 Gbps Ethernet)やレガシーおよび最新の無線商用ネットワーク(Bluetooth、Wi-Fi、V2VおよびV2I、3G/4G/5Gセルラー、独自規格の暗号化したキー・フォブ・アクセス)に接続しながらエレクトロニクス・システムを統合する作業は驚異的なペースで複雑化が進んでいます。代表的なワイヤ・ハーネスには車載電気システムの部品が350個以上、ECUは150個ほど接続されています。この複雑さに加え、競争の激化により製品の一刻も早い市場投入が求められるため、Tesla社に遅れをとらないように高付加価値のよりスマートな機能を備えた新車を他社に先駆けて販売することがますます重要となっています。こうした要求を満たす上で、もちろん乗員の生命が犠牲になるようなことがあってはなりません。

A地点からB地点へ、死者を出さず安全に

自動車の「エレクトロニクス化」の急速な進展、および最近のよりスマートなテクノロジの急速な普及により、自動車メーカーは安全運転の向上と死者数の減少に明らかに貢献しています。米国運輸省の発表によると、1975年に死者数分析報告システム(FARS)で統計を取り始めて以来、2014年は乗用車の乗員にとって最も安全な年でした。2014年の乗用車の乗員の死者数は全米で21,022人で、交通事故全体の死者数は32,675人でした。そのうちの1/3(9,967人)は飲酒運転による衝突、10%(3,179人)は不注意運転、そして半数以上はシートベルト不着用が原因とされています。つまり、これらの死亡事故のほとんどはドライバーの判断力に原因を求めることができます。よりスマートなシステムは人間よりも高速に反応でき、暗闇や霧の中で視界を確保できるなど、人間を超越した能力を発揮します。このため、自動運転車およびV2xが実用化すると交通事故が減り、より多くの人命が救われる可能性があります。交通事故死ゼロという自動車業界の目標達成に向けて、テクノロジの果たす役割には大きな期待がかかります。

十分な安全とセキュリティを備えた完全自動運転とV2Iをいち早く実用化するには、OEMはTier-1/Tier-2サプライヤだけでなく、自動運転に必要な交通インフラストラクチャの開発企業や政府機関とも連携をとりながら設計を進めていく必要があります。現在ハイエンドのスマート・カーに搭載されているソフトウェアのコードは1億行以上にも達します。したがって、新しい機能を実装する際には少なくともハードウェアだけでなくソフトウェアも機能安全規格に適合している必要があります。また、システムがますます複雑になり、インフラストラクチャやインターネットとの接続も増えていくため、悪意のある人間がバグや脆弱性を突いて惨事を引き起こす可能性も大きくなります。そこで、ソフトウェアをサイバー攻撃から保護するセキュリティが必須となります。

カテゴリートップ