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2017 Dec. vol.108

シノプシスとオートモーティブ:「Silicon to Software」でよりスマート、より安全、そしてよりセキュアな運転を実現へ

シノプシス コミュニケーションズ・ストラテジ担当ディレクター Mike Santarini

原始的ながらも確実に効果を上げたこれらのシステムを皮切りに、自動車メーカーはより強力なエレクトロニクス・システムの開発に向けて技術革新を始めるようになり、メーカー間の競争が活発になりました。その結果、自動車メーカーは単なるエレクトロニクス・システムを開発するのではなく、よりスマートなシステム、すなわちフュージョン・センサーとアクチュエータを高度なプロセッサによってローカルで制御し、複雑なソフトウェア・アルゴリズムおよびプログラムによって能力を大幅に高めた、より精巧なエレクトロニクスを開発するようになりました。この結果、エンジン制御システムからドライブ・トレーン、インフォテインメント、そして特に先進運転支援システム(ADAS)まで、車両全体の改良が飛躍的に進みました。更に、これらすべてのスマート・システムが、精巧化の進む高度な車載ネットワークで相互に接続され、車両内部だけでなく無線ネットワークを介して外部とも通信するようになっています。現在最先端の自動車は、道路脇に設置されたアシスタンス・サービスやインターネット(セルラーまたはWi-Fi経由)に接続しています。それ以外にも、自動車メーカーが車両にアクセスしてビッグデータを収集し、摩耗の予測、よりよい車両の設計、予防メンテナンスの販売、およびドライバーの習慣から見てとれる傾向の特定などに役立てています。自動車メーカーがこのビッグデータを提携会社に販売すると、運転習慣に反映されるライフスタイルに応じた商品を販売できるようになります。自動車の「エレクトロニクス化」に端を発し、よりスマートなシステムへと進化することによって、巨大な新市場が開けつつあります。しかしこれはまだ始まりでしかありません。
現在のADASはアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)、道路標識/歩行者検知、車線変更/死角検出、居眠り運転検知などの機能を備え、バック・カメラなどの単なるパッシブ・システムではなく、ドライバーに代わってハンドル、ブレーキ、アクセルを自動的に操作して事故を回避するアクティブ・システムへと急速に進化しており、これらは自動車の大きなセールス・ポイントとなりつつあります。バック・センサーに関しては、パッシブ・システムが正常に動作しているにもかかわらず後退時の事故件数が微増していることが最近の調査で明らかになっています。これは、実際には障害物がないのに警告音が鳴るケースが多く、ドライバーが警告音を無視するようになっているのが原因です。これらのセンサー・ベースのシステムをよりスマートにするため、自動車メーカーは更に複雑なアルゴリズムおよびソフトウェアの開発を継続しています。また、これらのセンサー・システムをブレーキやステアリングなどの安全システムにネットワークで接続することで事故を防ぐアクティブ・システムの搭載も進めています。

これらのよりスマートなアクティブ制御機能もまた、政府による義務化を含め自動車への標準搭載を目指す動きが見られます。たとえば米国では2017年までにカメラと電磁センサーを統合した後退警告システムをすべての新型車に標準装備することが政府によって義務化されています。また、米国のほぼすべての自動車メーカーが最近、2022年末までに自動緊急ブレーキを新車の標準装備とする自主協定を結び、更なる事故件数の減少を目指しています。こうしたよりスマートなシステムは、人間よりも高速に反応でき、暗闇や霧の中で視界を確保できるなど、人間を超越した能力を発揮します。ところがこれらのよりスマートなアクティブ・システムはテレメトリやインフォテインメントを含む車両内の他のエレクトロニクス・システムとネットワークで接続されています。つまり点火、ブレーキ、ステアリングなどの運転制御機能がインターネットに接続され、ありとあらゆるモノに接続されることになります。そこで急速に持ち上がっているのが、安全とサイバー・セキュリティの問題です。

約2年前から、多くの自動車メーカーが最新のADASおよびアクティブ制御技術を利用した初の半自動運転車の市場投入を急いでいますが、その先陣を切ったのがシリコンバレーの革新的な新興自動車メーカー Tesla社、およびインターネット/ビッグデータ界の巨人Google社です。電気自動車の未来を見据え、技術革新と競争を促すために自社の特許をパブリック・ドメインにした新興企業のTesla社は、顧客が自己責任で利用可能なベータ・ソフトウェア・アップデートの形で既に半自動運転機能を提供しています。一方、Google社の一風変わった自動車は既に自動運転に成功しています。Daimler Freightliner社は2015年にネバダ州から世界初となる公道での大型トラック自動運転実験の許可を取得しました。

こうした動きに追随する形で、多くの自動車メーカーが自動運転車の市販計画を発表しています。自動運転車は、まずドライバーによる積極的な監視が必要な半自動運転車から市場に投入されると考えられています。そして自動運転車が成熟して一般に普及するようになると、次に登場するのが車車間(V2V)通信を使用する新しいスマート・カーです。スマート・センサーと無線通信の統合により、他のスマート・カーや従来の自動車を認識し、事故を未然に回避してくれるようになります。自動車がよりインテリジェントになり、完全自動運転に向かうと、ドライバーが積極的に果たす役割は少なくなると考えられます。車両制御に関しては精巧な交通インフラストラクチャがより積極的な役割を果たすようになり、車間距離を数インチに保ちながら高速走行ができるようになる可能性もあり、これによって効率が向上し、交通渋滞が大幅に緩和されることが期待できます。このような路車間通信(V2I)が実現すると、個々の車両はまるでネットワーク上を流れるパケットのように扱われ、インフラストラクチャによって誘導されるようになります。インフラストラクチャの演算能力を十分に活用するには、自動運転車との通信能力を大幅に改善する必要があり、そのためにはエレクトロニクス・システムの更なる技術革新が必要です。将来、インフラストラクチャによって車両の流れが制御されるようになれば、歩行者は識別用のIoT機器を着用しているだけで道路を自由に横断できるようになり、交通標識や横断歩道さえも不要になると予想する人もいます。そうなると私たち自身も、巨大なネットワークを流れるパケットのような存在となります。

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