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Technology Update

2017 Aug Summer vol.107

成熟したノードでの先進デザイン、車載ICでさらなる拡大へ

シノプシス デザイン・グループ シニア・スタッフ・プロダクト・マーケティング・マネージャー Marco Casale-Rossi

現在最先端のテクノロジ・ノードでは、300 mmウェハ1枚に1兆個以上のトランジスタを集積できるようになっています。これは天の川の星の数より多い数字です。2020年までには1個のダイに1兆個以上、そして2030年までには10兆個のトランジスタを集積できるようになると考えられます。

半導体における驚異的な機能統合は、単位面積あたりのトランジスタを増やし続けることによって実現しています。ほんの数年前に最先端だったディスクリートDSPが、今やモバイル・ベースバンドICの一角にほとんど付け足しのような形で載っており、その周囲には、DSPが発明された当時複数のICやPCBに分散していた機能までもが集積されています。

非常に多くの機能を整合性のある1つのデザインにまとめ、その正しさを検証し、複雑さを増す物理コンテキストの中でデザインをインプリメントするには、EDA業界が提供するツールとメソドロジが欠かせません。このため、ともすれば最新のEDAツールが必要なのは最先端のテクノロジ・ノードで製造される最先端のデザインのみと考えてしまいがちです。

しかしそうではありません。最先端のテクノロジ・ノードを使用して採算のとれるアプリケーションは少なく、その数は減少の一途をたどっています。その一方、少し前の「枯れた」テクノロジ・ノードにはまだまだ大きな可能性があります。最先端のテクノロジ・ノードを使用するほどではなくても、デザイン自体が先進的なアプリケーションはいくつもあります。車載向けアプリケーションもその1つです。

たとえば運転者のスマートフォンに内蔵されているICは16 nmまたは14 nmプロセスで製造されているかもしれませんが、近年複雑化が進んでいるエンジン/パワートレーン制御、サスペンション、ステアリング、ブレーキ、安全、快適、エンターテインメントなどを司るシステムはいずれも90 nmなどの成熟したテクノロジ・ノードで製造されるのが一般的です。これらはデジタル、アナログ、ミックスドシグナル回路に加え、組込みSRAM、不揮発性メモリー、そして場合によってはMEMSセンサーまでも統合しています。このように、車載ICは非常に多くの機能を統合しており、しかも安全、信頼性、品質、コスト、Time-to-Marketに関する自動車業界の厳しい要求を満たす必要があります。

こうして考えると、最も大きな差別化要因となるのはプロセスではなくデザインそのものであると言えます。車載IC設計者もスマートフォン/タブレット向けIC設計者と同様に、あるいはそれ以上に最先端のEDAツールおよび設計手法を利用する必要があります。

車載IC設計にはどのような課題があるでしょうか。これらのICがデジタルのみの単純なCMOS回路であることはほとんどありません。電源電圧は1 V~数十Vまでの大きな幅があります。振動、湿度、温度といった動作条件も非常に過酷です。フロアプランやデザイン階層の複雑さがインプリメンテーションと検証の大きな課題となっており、デジタル機能はもはや最優先の課題ではなくなっています。そして最終的なICは、万一故障が発生してもエラーを正しく処理できることが求められます。

また、自動車のバッテリーに対する負荷が全体的に増大しているため、最先端の車載ICは高性能であるだけでなく動作時の消費電力を抑えることも重視されます。ダイ面積に占めるCMOS回路の割合は非常に小さく、多くの場合、その周囲をバイポーラ・アナログや高電圧DMOSが完全に取り囲んでいます。ICのフロアプランは主にアナログ・ブロックの要件を優先して決定され、デジタル・ブロックはその隙間を埋めるように配置されるのが一般的です。オンチップの配線リソースの効率的な使用も求められます。そして設計プロセスではデジタル、アナログ、およびミックスドシグナル・ブロックを並行して協調開発する必要があります。

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