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today&tomorrow

What's New in DesignWare IP?

2017 May Spring vol.106

安全性が重視されるハイボリューム・アプリケーション向けプロセッサ

シノプシス ARC EMプロセッサ担当プロダクト・ライン・マネージャー  Angela Raucher

カー・エレクトロニクス市場の継続的な拡大と自動車生産台数の増加に伴い、目的に特化した半導体デバイス、特にセーフティ・クリティカルなアプリケーション向けの半導体デバイスの需要は一層高まっています。一方、自動車業界への新規参入企業も続々と増えています。こうした競争圧力を受けて、コスト削減と開発期間短縮への取り組みがますます重要視されるようになっています。

セーフティ・クリティカルな自動車IC設計に携わる設計者やアーキテクトにとって、プロセッサやIPの選択は悩ましい問題です。車載用に設計されたIPを選択しても、特定のアプリケーションに対してうまく適合しないこともあります。すると面積の拡大やICの設計時間の増加を招くことになります。言い換えれば、設計の要件を十分満たすと思われるIPを選択しても、自動車の厳しい安全要件に合わせて改造することになり、より多くのリソースが必要となる上、開発期間も延びてしまうことになります。

セーフティ・クリティカルな車載アプリケーション向けICの設計にあたっては、目標とする安全性レベルを明確にしておくことが重要です。それによってIPに求める機能が決まるからです。自動車市場ではICのライフサイクルが長いので、将来のASIL要件に影響しそうな市場動向の調査も有効です。たとえば、先進運転支援システム(ADAS)向けICの場合、ドライバーの判断の参考情報を提供するだけならば、現時点ではASIL B認証で十分です。しかし、将来的にADAS向けICが自律走行におけるライフクリティカルな決定を行うことを考えるならば、ASIL D認証が必要となるでしょう。

ASIL Bではメモリー上でパリティのサポートがあれば十分と思われますが、ASIL Dの場合はエラー訂正符号(ECC)が必要です。また、SPFM 99 %超というASIL Dの厳しい要件を満たすには、セーフティ・クリティカルなパスにあるプロセッサをロックステップ方式で動作させて冗長性を持たせる必要がありますが、ASIL Bではやや要件が緩く、SPFMが90 %を上回ればよいため、そこまでは必要ありません(表1参照)。ただし、デザイン内の他のIPによっては、ロックステップを実装した方がよい場合もあります。

表1:故障検出率の評価指標とISO 26262 ASILレベルの関係

表1:故障検出率の評価指標とISO 26262 ASILレベルの関係

安全性要件を満たしているコンフィギュラブルなプロセッサIPを採用すれば、厳しい機能安全要件を満たす上でも、高い面積目標を達成する上でも、非常に大きなアドバンテージとなります。ASIL D認証を取得したIPを使えば、最も厳しい機能安全要件を満たしていることに加えて、欠かすことのできないシステマティック故障やランダム故障の検証が既に終了しているので、設計や検証にかかる時間を6~12か月短縮することができます。また、コンフィギュラブルなIPであれば、アプリケーションのASIL要件に応じてパリティまたはECCを実装するかどうかや、ロックステップ・インターフェイスを実現するかどうかを選択できます。ハイボリューム生産では、面積の削減によってマージンが増加し、競争力が高まります。またコンフィギュラブルなIPならば、1つの製品ラインに異なる要件の製品が含まれていても、ソフトウェアの互換性を使用することで、面積やマージンを犠牲にすることなくROIを向上できます。

安全性の高いコンフィギュラブルなプロセッサの一例が、シノプシスが数年前に発表したDesignWare ARC® EM SEP(Safety Enhancement Package)プロセッサです。それまで、マイクロコントローラ・クラスのプロセッサIPには、最も厳格な安全性基準を想定して設計・検証されたものがありませんでした。安全性の高い商用プロセッサ・コアは限定的ながら存在しましたが、いずれも高性能、高周波のカテゴリに含まれる製品でした。マイクロコントローラ・クラスの小型のプロセッサ・コアが必要な場合には、独自に作るかあるいはコンシューマ・アプリケーション向けのコアを作り替えるしかありませんでしたが、それには工数もかかりますし、機能安全の設計や検証に関する高度な専門技術も必要です。ARC EMプロセッサの登場によって、こうしたギャップが解消されました。さらに、ARC EMプロセッサにはコンフィギュラブルであるという利点があります。アプリケーションの要件に合わせ、ソフトウェア互換性を持つコアを場合に応じて最適化することができます。

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