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2017 Jan Winter vol.105

SoCデザインをファブに送る前にソフトウェア・ブリングアップを実行することの重要性近い将来、早期ソフトウェア・ブリングアップが検証フローの必須工程となる可能性も

シノプシス コーポレート・コミュニケーションズ・ストラテジ担当ディレクター Mike Santarini

スマート・デザインの時代を迎え、SoCデザイン検証の世界はますます複雑になっています。現在のSoCデザインには数百のブロック、種類の異なる複数のオンチップ・プロセッサと高速I/O、数百のボルテージ・アイランド、数千ものクロックが存在しており、その機能検証だけでも困難を極めています。その上、最近はデザインをファウンドリに送って実チップを製造する前にデザイン上でOSがブートするかどうかを検証し、場合によってはアプリケーションを動作させることも求められるようになりつつあります。最先端をゆく設計チームの中には、早期ソフトウェア・ブリングアップというこの比較的新しい工程で、より複雑なテストを導入し始めているケースも見られます。

「SoC検証は現在、劇的に変化しつつあります」とシノプシスのベリフィケーション・グループ、マーケティング担当副社長のMichael Sanieは述べています。「現在の検証作業は、ソフトウェアも含めた観点からのハードウェア検証が大半を占めています」。Sanieによると、これまで検証チームはさまざまな種類のスティミュラスを作成してシミュレーションを実行し、その他の各種検証ツールを使用してデザインに潜むバグを検出していました。これらのバグを修正したらデザインをファブに送ってチップを製造します。実チップが完成したら、そのチップを使ってソフトウェア・チームがソフトウェアをブリングアップし、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせが正しく機能するようになるまでソフトウェアを調整するという方法をとっていました。

ところが携帯電話メーカーがスマートフォンの開発を始めるようになった10年ほど前からこうした状況に変化が現れました。それまでよりもはるかに多くのソフトウェアをサポートできるSoCプラットフォームASSPが必要になり、SoC設計チームはますます短期間でデザインを完成させることが求められるようになったのです。「実チップがファブから戻るのを待ってソフトウェア・チームが作業を開始していたのでは間に合わないという認識が急速に広まりました」とSanieは述べています。ファブから実チップが返ってきた後にチップ・メーカーやOEMメーカーが計画しているソフトウェアを実行できるだけの機能や性能が備わっていないことが判明した場合、チップの再設計とリスピンが発生します。そうなると製品の市場投入が遅れて売上利益率は大きな打撃を被ります。当然、それはOEMメーカーとの関係終焉をも意味するでしょう。サインオフ前の段階でソフトウェア・ブリングアップを実行するようになった結果、ソフトウェア開発を前倒しで開始できるようになり、携帯電話メーカーは競争が激化するスマートフォン市場で製品を市場に投入するまでの期間を全体的に短縮できるようになりました。

ここ5年間で、スマート・テクノロジはエンベデッド・ビジョン、自動車、データセンター、SDN/NFV、IoTなど多くのアプリケーション分野へと採用が広がりました。これに伴い、早期ソフトウェア・ブリングアップはもはや例外的なことではなく、常識になっているとしてSanieは次のように述べています。「私の知る限り、現在デザイン上でソフトウェア・ブリングアップをまったく行わずにチップをテープアウトしてファブに送っている検証チームはほとんどありません。そんなことをしたら破滅です」

現在、シリコンのサインオフ前に設計チームがどの程度の量のソフトウェアを実行するかは、ターゲットとする市場によって異なります。製品の世代交代が加速し、ほとんどの市場で新製品投入サイクルが短縮していることもあって、SoCデザインをファブに送る前に完全なソフトウェア・スタックをデザイン上で実行している企業はほとんどないとSanieは述べています。「それでも、デザインをファブに送る前に少なくともAndroidまたはLinuxがデザインでブートアップすることは確認しています」。

テクノロジのスマート化が著しい現在、より精巧なハードウェアとより多くのソフトウェア・スタックを組み合わせて、より多くの複雑なタスクを同時に実行するようになっています。こうした中、ソフトウェアをブリングアップしてターゲット・ハードウェアとのシームレスな動作を確認することは、一部の業界では単なる「推奨事項」から「必須事項」へと急速に変わってきています。

代表的な例として、自動車業界の車載デザイン向けISO 26262規格があります。この規格では、自動車業界のサプライヤがSoCレベルで包括的なハードウェア/ソフトウェアの安全テストを実施し、テストの方法と結果を詳細に文書化することが推奨されています(Today & Tomorrow Vol.102 オートモーティブ特集号参照)。IoT、スマートシティ、スマートインフラ、自動運転車など、多くの業界でよりスマートなコネクテッド・システムが導入されるようになった今、安全テストだけでなくセキュリティ・テストも必須となりつつあります。現在の規格ではプリシリコン(実機完成前)のハードウェア/ソフトウェア検証は明示的に必須とはされていませんが、デバイスおよびデバイス上で動作するソフトウェアの複雑さが増していることを考えると、そう遠くない将来これらの検証も必須になるものと考えられます。

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