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2017 Jan Winter vol.105

SoCデザインをファブに送る前にソフトウェア・ブリングアップを実行することの重要性近い将来、早期ソフトウェア・ブリングアップが検証フローの必須工程となる可能性も

シノプシス コーポレート・コミュニケーションズ・ストラテジ担当ディレクター Mike Santarini

多くのスマート・システムでは、複雑なSoCと複雑なソフトウェア・スタックを密結合することが以前にも増して重要になっていると指摘するのは、シノプシスのベリフィケーション・グループ所属サイエンティストArturo Salzです。現在のスマートSoCには数百のボルテージ・アイランド、数千のクロック、複数のプロセッサが存在し、複数のモードで動作するものもあります。さらに、1つのチップをより多くの市場の製品に展開できるようにするため、半導体メーカーはヘテロジニアス・プロセッシング・プラットフォーム(幅広い種類のOS/RTOSやソフトウェアを実行できる、いわゆる「全部載せ」のASSP SoC)を開発することが多くなっています。ソフトウェアの不具合や悪意あるプログラムによってプロセッサ・コアがオーバークロック状態になると、コアの焼損やシステム・バッテリの急速な消耗を招くことがあるため、シリコンの耐性を高めること、およびソフトウェアが暴走した場合に安全かつ回復可能なステートに復帰できるようにしておくことが必要になります。

ソフトウェア・ブリングアップは市場によっては必須と言えるほど広がりつつあるものの、早期ソフトウェア・ブリングアップというこの比較的新しい工程で設計チームがどのようなタスクを実行するかについては、まだ方法論が確立していないとして、Sanieは次のように述べています。「最近はこの段階で電力プロファイリングや電力推定を実行するユーザーが増えています。スマートフォン・メーカーの場合、製品の動作を数日間かけてエミュレートし、あらゆる種類のアプリを実行して消費電力の特性を把握して、潜在的な問題を洗い出す作業を行っています。これらの実行結果からシステム全体の電力プロファイルをより正確に把握し、チップ・レベルでボルテージ・アイランドを調整したりシステム・レベルでバッテリ容量を増やしたりするといった変更が必要かどうかを決定しています」。この点に関してSalzは、ソフトウェア・ブリングアップと電力プロファイリングを行うにはこれまでとは桁違いのハードウェア検証とソフトウェア・テストが必要であるとして次のように述べています。「これらは個別にもテストできますが、組み合わせてテストすることも必要です」。

しかし、現在の非常に大規模で複雑なIC、SoC、ヘテロジニアス・プラットフォームASSPデザイン上でこれまで以上に多くのソフトウェア・スタックをブリングアップする場合、デザインの機能が正しいことを確認するには検証用コンピュータに圧倒的な処理性能が必要なほか、メソドロジも調整する必要があります。「Androidをブリングアップするには400億サイクル以上が必要です。このため、多くのチームが早期ソフトウェア・ブリングアップをハードウェア上で実行するようになっています」(Sanie)。現在エミュレーションとFPGAベース・プロトタイピングが主流になりつつあり、これらの市場が成長しているのも、このことが大きな理由であるとSanieは述べています。

事実、2016年第2四半期のEDA業界各社の財務諸表を見ると、業界上位3社はいずれもエミュレーション分野で業績を伸ばしており、ハードウェア・アシストによる検証に対するニーズが高まっていることが伺えます。この成長には、ムーアの法則によって設計チームが利用できるゲート/トランジスタ数が増加したため、一度により大容量のデザインを検証したいというニーズが高まっているという側面もあるとSanieは推測しています。しかし、複雑なハードウェアとより大規模なソフトウェア・スタックを組み合わせたよりスマートなシステムをいち早く市場に投入しようという競争が多くの市場で激化しているため、今後は早期ソフトウェア・ブリングアップが検証工程における新しいミッションになるだろうとSanieは予測しています。

Sanieは、「シノプシスのZeBu®が業界で最も急成長中のエミュレーション・ファミリであり、デザインを最高5 MHzのクロックで動作可能なZeBuが、生の性能では最速です」と主張しています。これは、従来のエミュレーション・システムの1 MHzという基準を大きく上回っています。さらに、HAPS®システムなら、15 MHz~20 MHz(代表値)のシステム・クロックでの動作が可能です。このエミュレーション・システムはシミュレーション・ライクな環境でデザインを検証できるため、ブリングアップに使用するチームが増えているとSanieは述べています。システム全体の一部としてソフトウェアを開発するために、今後は設計グループがHAPSを利用してプロトタイピングを行うことが多くなるでしょう。

シノプシスのエミュレーション事業が成長している理由はZeBuおよびHAPSシステムの生の性能だけにあるのではなく、検証フロー全体をシームレスにサポートするシノプシスの統合検証プラットフォーム「Verification Continuum™」も大きな要因であるとSanieは述べています(図1)。

図1:これまで以上に統合度を高め、製品の早期市場投入をサポートするシノプシスVerification Continuumプラットフォーム

図1:これまで以上に統合度を高め、製品の早期市場投入をサポートするシノプシスVerification Continuumプラットフォーム

「Verification Continuumは、検証フローの各工程に対応した業界最高水準のポイント・ツールで構成されています。業界最高水準のポイント・ツールがエンド・ツー・エンドで揃っていること自体、非常に魅力的ではありますが、ここ数年シノプシスはこれらのツールを1つのシームレスなプラットフォームに統合する大がかりな作業を進めてきました。この結果、Verification Continuumプラットフォームを構成するすべての検証ツールで最高速のエンジンを利用できるようになっただけでなく、Unified CompileやUnified Debugなどネイティブな統合機能も共有できるようになりました。これらのネイティブな統合機能は、シミュレーション、エミュレーション、FPGAプロトタイピングの間でデザインを行き来して、フロー全体でデバッグを行うのにかかる時間を飛躍的に短縮することを目的に開発しています」(Sanie)。

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