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What's New in DesignWare IP?

2017 Jan Winter vol.105

車載環境におけるDDR DRAMの利用

著者:Marc Greenberg, Product Marketing Director, Synopsys

DRAMを車載システムで使用する際の注意点

DRAMチップのコア・アーキテクチャは、ビットセルをアナログ配列(アレイ)として構成しており、1ビット当たり数十フェムトファラッド(電子数万個)のわずかな電荷をキャパシタに蓄えています。1つのダイには40億~80億ビット(4 Gb~8 Gb)が集積されています。DRAMを自動車で使用する場合は、車載環境の厳しい動作条件下で高い信頼性要件を満足できるようにシステム・レベルでの対策をとる必要があります。

DRAMビットセルの根本的な問題の1つに、キャパシタの電荷が漏れるため定期的にリフレッシュを行わないとメモリーに格納したデータが失われることが挙げられます。電荷が漏れる速度は温度に依存し、高温になるほど短時間で漏れてしまいます。多くの自動車メーカーは、カメラ・ベースのADASモジュールをフロントガラスに設置しています。これは、ワイパーを作動させるとADASのカメラも同時にクリーニングできて好都合なためです。その一方、直射日光が当たるため真夏の炎天下で駐車すると、非常に高い温度にさらされる可能性があります。ほとんどの車載アプリケーションでは、DRAMに対して、PCなどの一般的なアプリケーションよりも高い温度での動作が要求されます。このため、車載アプリケーションで使用するDRAMには特別な設計が必要です。

最近のADASデザインで使用されるDRAMで最も一般的なのはLPDDR4 SDRAMです。もともとモバイル機器向けに設計されたLPDDR4は、容量、速度、フォーム・ファクターのバランスがとれており車載アプリケーションにも魅力的です。このため、DRAMメーカー各社は車載環境での試験に合格した車載温度グレード対応のLPDDR4を提供しています。

DRAMデバイスは、放射線の電離作用によるシングル・イベント・アップセット(SEU)の影響を受けやすい(ソフト・エラーが起こりやすい)性質があります。これは、DRAM内の原子核にニュートリノやその他の宇宙線粒子が衝突すると原子崩壊が発生し、近傍のビットセルが電荷を失う現象です。この場合も、失われたデータを回復するためにエラー訂正回路を導入する必要があります。

また、物理インターフェイスをどれだけ入念に設計してもLPDDR4のデータ転送レートではビット・エラー率(BER)をゼロにはできないため、データ転送エラーのリスクについても対処する必要があります。

DRAMデバイス内部で発生したエラーがシステムのその他のブロックへ伝搬するのを防ぐエラー軽減手法はいくつかあります。たとえばDRAMメーカーは、温度耐性を高めたビットセルを開発したり、リフレッシュが間に合わず電荷を失ったビットセルの補正用にDRAMダイ内部にエラー訂正回路を追加したりしています。DRAMダイにエラー訂正回路が内蔵されている場合でも、SoC設計者がDRAMインターフェイス部分にエラー訂正回路を追加してDRAMのエラー軽減を図ることができます。

サーバやネットワーキング・チップのような従来のDDR DRAMデザインでは、エラー訂正情報をDRAMデータとは別のチャネルで転送するサイドバンドECC方式が一般的です。しかしLPDDR4デバイスでダイ当たり2つの16ビット・チャネルを使用し、パッケージ当たり2~4個のダイを使用し、パッケージ当たり4チャネルを使用した場合、ECCデータ専用のサイドバンド・ピンを実装するのは非常に困難です。この場合、保護対象のデータと同じデータ・ピンでECCデータを転送するインラインECC方式を使用します(図1)。

サイドバンドECCとインラインECCの比較

図1:サイドバンドECCとインラインECCの比較

車載規格への適合

車載デザインで外部DRAMに接続するSoCは、主にAEC-Q100やISO 26262などの車載向け信頼性規格に適合する必要があります。

DRAMインターフェイスのハードIPは特別な設計と特性評価が行われており、信頼性と温度耐性の両面でAEC-Q100規格に適合したインプリメンテーションが可能です。

ISO 26262では、開発プロセス、設計、認証に関していくつかの要件を定めています。この規格では、設計の安全に関するメソドロジを定義すること、開発プロセスに責任を持つ安全管理者を任命することが中心的な要件として求められています。DRAMインターフェイスIPには、インターフェイスを定期的にテストする回路を追加し、安全目標に違反するエラーの大半を瞬時に検出できるようにすることが求められます。通常は、第三者機関による認証を実施してデザインのコンプライアンスを評価し、適合しているASILのレベルを決定します。車載デザインの大半は、DRAMインターフェイスの保護に関して少なくともASIL Bを必要とします。デザインによっては、安全を司るプロセッサとその関連回路にのみ適用される最も高い保護レベルのASIL Dが必要とされることもあります。

まとめ

DRAMデバイスは、より安全で高機能、そしてより快適な自動車を実現するキー・テクノロジです。入念な設計と厳格なプロセスを採用すれば、DRAMを自動車の安全系システムで利用することは十分に可能です。DRAMの広い帯域幅と大容量を活かすことにより、運転者情報システム、ADAS、自動運転車に必要なコンピューティングを実現できます。

シノプシスはDDRインターフェイスIP ソリューションとして、PHY IP、コントローラIP、検証用IP、アーキテクチャ設計モデル、プロトタイピング・システムなどを幅広くご提供しています。新規に車載デザインを開始されるお客様は、車載グレードIPについてシノプシスまでお問い合わせください。

出典

  • IC Insights McClean report, 2016
  • Highway Data Loss Institute, 2016
  • 米国道路交通安全局(NHTSA)

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