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today&tomorrow

What's New in DesignWare IP?

2017 Jan Winter vol.105

車載環境におけるDDR DRAMの利用

著者:Marc Greenberg, Product Marketing Director, Synopsys

圧倒的な出荷数を誇るDRAMデバイスですが、自動車での利用はごくわずかです。シノプシスの実績でも、DDR SDRAMインターフェイスIPの採用実績1000件超のうち、車載向けチップに採用されたものは約5%しかありません。しかもその多くはインフォテインメント・システム向けデザインで、安全系システムでの利用はほとんどありませんでした。

DRAMデバイスが情報系システムでの利用にとどまり、安全系システムに採用されてこなかったのはなぜでしょうか。これまで、自動車の安全系システムにはSRAMの方が適しているという考えがありました。理由は主に次の4つです。

  1. 高度な演算性能が必要なかった:これまでの自動車の安全系システムは、エンジン、ブレーキ、モーション・センサーからのセンサー・データ、および運転手からの入力を処理してエンジンやブレーキ・システムを制御するだけで、それほど高い演算性能は必要ありませんでした。一般に、これらシステムのコンピューティング・ニーズはSRAMの帯域幅と容量で十分に満たすことができ、DRAMは必要ありませんでした。
  2. カメラ入力やディスプレイ出力が使われていなかった:多くの場合、高精細な音声や動画の入出力には、コンピューティングやバッファリングの要件を満たすためにDRAMが必要となります。しかしこれまで、インフォテインメント・システムやリアビュー・カメラ以外でDRAMの帯域幅とメモリー容量が必要とされることはほとんどありませんでした。
  3. 信頼性の問題:一部のSRAMデバイスはDRAMデバイスよりも高い温度で動作します。また、SRAMデバイスは全体的にソフト・エラーやシングル・イベント・アップセット(SEU)への耐性が高く、放射線粒子との衝突によってデータが失われることがほとんどありません。また、必要なSRAM容量が数Mb未満と小さい場合はSRAMとCPUを同じSoCに集積できるため、SoCメーカー自身で信頼性を管理できます。
  4. RTOSとの相性:DRAMデバイスは定期的に内部リフレッシュが必要で、リフレッシュ中はメモリーにアクセスできません。このように定期的にアクセスできなくなるメモリーは、RTOS(リアルタイム・オペレーティング・システム)でサポートされないことがあります。

しかし今、自動車におけるDRAMの位置付けに変化が生じています。まず、従来のアナログ・メーターに代わってスピード・メーターや各種インジケータなど、安全に直結する情報がデジタル・ディスプレイに表示されるようになっています。また、業界全体で自動運転に向けた機運も高まっています。もちろん完全な自動運転の実現はまだ先の話ですが、先進ナビゲーション・システム、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)、車線逸脱警報(LDW)、衝突警報・回避支援といった先進運転支援システム(ADAS)の機能は既に多くの自動車に採用されつつあります。

DRAMが自動車にもたらす利点

DRAMは、次に示す自動車の3つの先進機能を実現するキー・テクノロジとなります。

  1. ディスプレイ:一般に、高解像度ディスプレイにはDRAMが必要です。高解像度ディスプレイを利用したインパネやヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)には安全に直結する情報が表示されます。これはまさに安全系システムでのDRAM利用に該当します。
  2. カメラや広帯域センサーを利用したADAS:ADASシステムにはカメラや各種センサーが接続され、大量のデータが入力されます。これらのデータに対してノイズ除去、明度補正、物体・障害物の識別を実行しようとすると、DRAMの帯域幅と容量が必要です。
  3. 自動運転車:自動運転車では広帯域幅の入力ソースを多数処理するために強力な演算性能が必要となるため、DRAMが欠かせません。

今後、これらアプリケーションの実用化が進むにつれ、自動車におけるDRAMの必要性はますます高まっていきます。SRAMは今後もブレーキ制御やエンジン制御に使用され、DRAMがSRAMを置き換えるわけではありません。しかしDRAMを利用することで、より高機能なADASや運転者情報システムが実現します。

米国道路安全保険協会(IIHS)の関連団体HDLI(Highway Data Loss Institute)の調査によると、オプションのADAS(ここではカメラを利用した前方衝突警報/車線逸脱警報機能)を装備した車と非装備の同型車を比べると、ADAS装備車の方が衝突事故が少なく、人身事故補償および医療費の保険損失も20%以上少ないとの結果が報告されています[2] 。

また先ごろ、米国自動車市場のシェア99%以上を占める自動車メーカー20社が、2022年までにADAS機能の1つである自動緊急ブレーキ(AEB)をすべての新車に標準装備することが発表されました[3]。不注意や運転技能不足といった原因で運転手が前方衝突を直前まで認識できない場合、AEBが自動的にブレーキをかけて衝突を防止、または衝突被害を軽減してくれます。

米国郊外で最も人気のある中型SUVだけを見ても、メーカー各社の2017年モデルの新車のうち少なくとも12車種がカメラ・ベースの前方衝突警報(FCW)機能に対応しており、そのうち少なくとも9車種はAEBにも対応しています。また、少なくとも4社は中型SUVの全車種にFCWを標準装備しています。

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